2019年4月6日土曜日

武力による領土拡大

 米トランプ大統領は、シリアのゴラン高原に対するイスラエルの主権を認める宣言に署名した。ゴラン高原をイスラエルが占領したのは1967年の第3次中東戦争。その後、住民の大半を追放してユダヤ人の新しい入植地を建設し、81年に事実上の併合を宣言していた。

 だが、国連の副報道官は「国連は、イスラエルによるシリア領ゴラン高原占領が国際法に反すると規定する全ての安保理決議、総会決議を順守する」とした。国連安保理は81年に決議497で、イスラエルのゴラン高原併合決定は「無効であり、国際法上の効果はない」との決議を全会一致で採択している。

 67年の第3次中東戦争におけるイスラエルの占領を国連安保理は決議242で無効とし、占領した地域からの撤退を求めた。これは全会一致の決議であり、米国も賛成していたが、イスラエルは従わずに占領を続けていた。国連決議をイスラエルが公然と無視できるのは、米国政治に強い影響力を有しているとともに、自国の生存に関して国際社会が「無力」であると見ているからだろう。

 トランプ大統領がイスラエルのゴラン高原併合を認めたのは、イスラエル現政権への支援であり、50年以上の占領地支配を認める現状追認である。イスラエルを占領地から撤退させることは周辺諸国にはもうできず、国際社会もイスラエルを説得できない。つまりイスラエルの占領は国際的には黙認されている状態だった。

 今回のトランプ大統領の判断は「イスラエルは特別だから」と下されたのだろうが、イスラエルを特別扱いするとの国際的な合意はないので、イスラエルの占領地併合が認められるなら他国からも占領による領土拡大を認めろとの主張が出てこよう。例えば、ロシアのクリミア併合や中国の南シナ海占有。

 かつて国家は戦争によって領土を拡張した。国家には盛衰があるので、欧州の歴史に見られるように国境線は常に書き換えられてきた。強大な国家が誕生すると、拡張を始め、占領地=新たな領土を増やし、支配した。そんな歴史を終わらせようと、武力による領土拡張は認めないと国際社会は同意したはずだったのに、世界はまた変わろうとしているようだ。

 イスラエルの武力による領土拡張に国際社会は無力だったが、ロシアや中国の領土拡張にも国際社会は無力だ。ただ、クウェートを併合しようとしたイラクが撤退させられたように、どんな国家でも領土拡張が黙認されるわけではない。軍事力と政治力が国際的に強大な国家の領土拡張だけが黙認される。それをトランプ大統領は素直に認めた。

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