2019年5月25日土曜日

世界を分割支配

 米国は中国からの輸入品(2000億ドル相当)に対する関税を10%から25%に引き上げ、さらに関税引き上げの対象を3000億ドル相当の中国からの輸入品に拡大することを発表した。

 米国と中国の協議はまとまりかけたものの、合意文書の大幅な修正を中国政府が提示してきて、米国が実力行使に踏み切った形だ。中国政府は▽知的財産・企業秘密の保護▽技術の強制移転▽競争政策▽金融サービス市場へのアクセス▽為替操作ーで法律を改正するとの約束を撤回したという。

 中国における法律の改正を合意文書に明記することは、米国の圧力に屈して中国政府が国内法を変えることが公表されることでもある。だが、中国政府の「メンツ」を尊重して合意文書に明記しなければ、確実に合意事項が履行されるか不透明だ(過去の中国政府の行動からすると、履行されない可能性が高いだろう)。

 米国と中国が互いに自国の利益を第一に争っている様子を、世界における覇権争いと解釈する論評が増えた。かつての冷戦で米国と覇権を争ったソ連が解体し、米国の1強体制が続いていたが、改革開放で経済の急成長を遂げて米国に次ぐ国力を備えた中国が覇権を求めているという解釈だ。

 中国はかつて覇権主義を厳しく批判していた。批判の対象はソ連であり、ソ連衰退後は米国であった。世界第二の経済大国に成長し、相応の軍事力を整備した中国が現在、覇権を求めていると批判されるのは皮肉だが、中国は立場を使い分けて自国に都合がいい主張をするのは珍しくない(経済大国になっても、時には途上国だと主張する)から、覇権を求めているとの解釈には相応の説得力がある。

 昨年、改革開放政策40年を祝う式典で習近平国家主席は「開放型の世界経済の建設を積極的に推進し、覇権主義に反対する」と演説した。開放型の世界経済に中国経済が含まれるのか、そこが各国から疑念を持たれて、中国の行動が各国から覇権主義に見えてもいる。だが、中国は「変わろう」としない。

 かつての冷戦は米国とソ連による世界の分割支配だった。現在の中国が支配しているとみなせる勢力圏は世界にほとんどなく、中国と米国との世界分割支配には程遠い。しかし、「債務のワナ」などに見られるように中国は世界各地に勢力圏を拡大しようとしている。中国は単独の覇権ではなく、米国と中国による世界の分割支配を目指しているとみるなら、近年の中国の世界における行動は理解しやすい。

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