2026年4月15日水曜日

情報を消費する

 訪日外国人が4000万人を超え、経済波及効果が大きいと期待されているが、一方で京都などの人気観光地では過剰な混雑(オーバーツーリズム)が地域住民の生活に影響を与え、時には平穏な生活を阻害したり、負担を生じさせていると報じられる。訪日外国人の殺到が現実となって、その負の側面が可視化された。

 訪日外国人は京都・奈良・浅草・秋葉原など定番の観光地以外にも殺到するようになり、例えば、スラムダンクの聖地とされる江ノ島電鉄の鎌倉高校前駅付近の踏切や富士河口湖町の富士山コンビニ、五重の塔と富士山を同時に見ることができる新倉山浅間公園などにも押し寄せている。人数が多すぎて過密になったり、車道に出て写真撮影したり、ゴミを捨てたり、民家の敷地内に侵入したり、場所を構わず飲食したりと殺到する訪日外国人の迷惑行為が問題化している。

 ガイドブックなどで旅行先の情報を集め、どこを見て、何を食べるかなど行動予定を立てることは以前から誰でも行っていただろうが、今ではSNSが重要な情報源となった。渋谷のスクランブル交差点を見に訪日外国人が集まるのは、スクランブル交差点を四方八方に渡る日本人の様子をSNSで見て、実際に見てみたいと来日するからだ。SNSで得た情報を、実際に確かめるための訪日であり、日本旅行だ。

 旅行には行動予定を立てないものもあるが、いまでは少数派となったか。目的地も宿も決めず列車に乗ったり、車を走らせたりして、様々な出合いを経験するのが楽しみだという人は多くはないようだ。行動予定を立てなくてもスマホで適時に情報をチェックすることができるようになり、得た情報に従って旅行先で行動する観光客が増えたことは、観光地でスマホをチェックしている訪日外国人の多さで明らかだ。彼らは情報とともに行動している。

 SNSで得た情報によって渋谷スクランブル交差点や鳥居が並ぶ伏見稲荷大社などに訪日外国人が集中するのは、SNSなどの情報に誘導されている現象だ。渋谷スクランブル交差点を四方八方から渡る光景が驚きだという情報を得た人が、日本旅行を思い立ち、さらにSNSで情報を集め、その情報を自分で確かめるべく訪日する。これは情報を消費する活動だ。

 消費とは「人が欲求を満たすために財貨・サービスを使うこと」。SNSなどの情報は対価を伴わないことが大半だから、情報が消費の対象だという実感は乏しいだろうし、訪日旅行を促すなど情報は消費を喚起するだけだと思われているかもしれない。だが、SNSなどの情報はサービスとして提供されているものであり、無償であってもサービスを享受するのは消費行動である。得た情報に欲求を刺激されて行動する人は情報の消費者であり、消費された情報は忘れられる。

 情報の大半は流れ去っていくだけだが、人に何らかの影響を与える情報があり、思考や関心の方向を変化させたり、何らかの行動を誘引する。インターネット網が世界を覆い、あふれる情報の中で人々は生きるようになり、情報を選別し、消費する。フェイクニュースに踊らされるのも情報の消費形態の一つだし、特定の出来事に人々の関心が集中するのは情報が大量消費されている現象だ。

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