2026年4月22日水曜日

機密を握る人々

 日本はスパイ天国だと批判する人がいる。その言葉を信じると、日本では各国のスパイが自由に情報収集活動を行っているのだろう。ことあるごとに日本を批判する中国やロシア、北朝鮮・韓国などのスパイが日本の国家機密を狙い、日本を属国化しているとされる米国も、日本を支配下に置いておくために霞が関などにスパイ網を張り巡らしているだろう。

 日本の国家機密が中国やロシア、北朝鮮・韓国、米国などにダダ漏れだとすれば、国際的に日本は軽視され、外部からコントロール可能な国家だと見なされよう。日本が米国の支配を脱して自立し、独自の政策や独自の外交を行うためには、日本国内で活動するスパイを監視・制御し、必要ならば各国のスパイ網を摘発し、自由に各国のスパイが活動できないようにしなければならない。

 ネットや新聞などを頼りに情報収集するスパイは監視・制御できない。だが、国家機密に接することができる日本人から情報を収集しようとする諸外国のスパイなら監視・制御できるかもしれない。そうした日本人に諸外国のスパイは接触し、弱みを握ったり、過度に親密になったりして関係を構築し、情報を提供させるように仕向ける。そうした関係を情報収集の対象者と築くのが各国のスパイの手腕だ。

 機密とは「組織体にとっての大事な秘密事項」だが、国家においては「主に政治上・軍事上・外交上などでの保護すべき重要度が最も高い秘密」であり、外務省は秘密情報を重要度の高いものから順に「機密」「極秘」「秘」の3段階に区分して保護し、防衛省には特別防衛機密として「機密」「極秘」「秘」があり、ほかに「特定秘密」や「省秘」などがある。

 こうした政治上・軍事上・外交上などの国家機密に接し、内容をつぶさに知ることができるのは霞が関などの高級官僚と一部の政治家、自衛官らに限られる。スパイ防止法が成立すれば、監視する対象は霞が関などの高級官僚と一部の政治家、自衛官らに絞られ、その行動や交友関係などは徹底的に監視されることになるはずだ。日本の国家機密に接し、それを他国に漏洩できるのは霞が関などの高級官僚と一部の政治家、自衛官らだけだ。

 しかし、どのような行為がスパイ活動か、何が処罰の対象か曖昧なスパイ防止法(「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」)が成立すれば、一般の人々も監視対象になると日本弁護士連合会は警告する。問題点は①「国家秘密」の内容が広範囲・無限定であり、行政当局の恣意的専断を許す、②実行行為及び過失犯など行為類型が広範囲・無限定であり、調査・取材活動、言論・報道活動、日常的会話等のすべてが含まれる、③死刑を含む重罪が課される、④予備・陰謀罪と独立教唆犯の提案は罪刑法定主義と行為責任主義の原則に違反する。

 国家機密の漏洩を防ぐことが目的ならば、監視対象になるのは国家機密に接することができる霞が関などの高級官僚と一部の政治家、自衛官らに絞られる。だが、統制強化を目的とするスパイ防止法ならば、行政は拡大解釈によってマスメディアや一般の人々を対象にするだろう。だが、それは国家機密のダダ漏れを防ぐことには効力が弱く、各国のスパイは自由に情報収集活動を行うことを続ける。

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