2026年4月8日水曜日

不確かな定義

 衆議院HPの第180回国会で審議された議案の中に「刑法の一部を改正する法律案」があり、新たに「第四章の二 国旗損壊の罪」を加え、内容は「第九十四条の二 日本国に対して侮辱を加える目的で、国旗を損壊し、除去し、又は汚損した者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する」とする。改正する理由として「日本国に対して侮辱を加える目的で、国旗を損壊し、除去し、又は汚損する行為についての処罰規定を整備する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である」とするが、国旗損壊罪の創設を目的とした刑法改正案は議論が続いている。

 日本において国旗は「国旗は、日章旗とする」(国旗及び国歌に関する法律)とされ、日章旗の寸法は縦が「横の三分の二」、日章の位置は直径が「縦の五分の三」、中心は「旗の中心」、彩色は地が「白色」、日章は「紅色」と定義されている。国旗の外形の寸法は決められていないので、大小の大きさを問わず、法律による定義に当てはまるものは国旗とみなされる。

 だから、お子様ランチに立っている小さな旗が法律による定義に適っていれば国旗になり、五輪の開会式で入場行進する日本や各国の選手団が振る小旗が法律による定義に適っていれば日章旗だとみなされ、国旗になる。さらには、Tシャツなどの胸や背後にプリントされた日章旗が法律の定義に適っていれば、それも国旗となる。

 もし改正刑法が成立すれば、日本の法律により国旗とされる大小様々の旗を損壊・除去・汚損した人は処罰される。食べ終わって片付けられたお子様ランチの日章旗を捨てた人は刑法に抵触し、五輪の入場行進で使われた小旗の日章旗を捨てるなど処分した人は刑法に抵触し、国旗に該当するプリントが施されたTシャツなどを捨てたり破いたりした人は刑法に抵触したことになる。

 国旗損壊罪の創設を目的とした「刑法の一部を改正する法律案」が国会で成立すれば、法律により国旗とみなされる形象の旗を損壊・除去・汚損した人は処罰される。国旗を尊重し、崇める人がいるのだから、そうした感情を尊重することは大切だろうが、そうした感情を絶対視し、人々に強制するのは、多様な意見の存在を許す「自由で開かれた」社会・国家にはふさわしくない。

 さらに、法律による国旗の定義を少しでも外していれば、法律上は国旗ではなくなるので、いくらでも損壊・除去・汚損できる可能性がある。外形が正方形の日の丸や外形が菱形などの日の丸、外形が不定形の日の丸、日章が大きすぎたり小さすぎたり、位置が偏っている旗は日本の法律では国旗とされないから、損壊・除去・汚損を行っても法律上では処罰の対象にはできないだろう。

 国旗はシンボルであるから多少の変形を伴っても、それと認識できる。一方、国旗の寸法などの定義を厳密化するほどに、抜け道は多くなる。だが、法的な定義を曖昧にすることで、行政は解釈で、いくらでも処罰対象を拡大することを行うだろうし、行政に従う日本の司法によって処罰が実行される。国旗の定義が曖昧な国旗損壊罪が成立すれば、権力は解釈次第でいくらでも厳しい処罰を乱発できる。

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