米国で2024年の大統領選により共和党候補のトランプ氏が当選し、同時に行われた上院選では共和党が53議席になって過半数を制し、下院選でも共和党が220議席で過半数を制した(上院の定数は100、下院の定数は435)。行政府と立法府を共和党が制し、終身制の9人の最高裁判事はトランプ氏が前政権時に保守派判事3人を指名したことで保守派6人、リベラル派3人となり、人工妊娠中絶の権利を保障した判決を覆すなど保守的な判決を出し続けている。
行政・立法・司法の三権に対して共和党の影響力が増大し、意のままに権力を振り回しそうなトランプ氏のイメージもあって、米国では三権分立が形骸化するようにも見える。ただ、議会で共和党が過半数を制したとはいえ、圧倒的な多数とはいえず、党議拘束がないこともあり、共和党の優位は限定的だ。最高裁も常にトランプ氏の方針や判断に従うかどうかも不明だ。
ロシアや中国など三権分立の体制を構築してる権威主義国はあるが、実際には三権が互いに監視し、牽制することはなく、個人独裁の強化・正当化のための機関と化している。立法府は個人独裁のために便利な法律を次々と成立させ、司法は人々に対する過酷な抑圧を正当化するための判例を積み重ね、時には行政機関の脱法行為に黙ったり、正当化する。
三権分立は近代国家の装いとして不可欠だから、権威主義国家も三権分立の制度を構築する。だが、互いに監視・牽制することがない三権は最高権力を支える制度となり、三権が一体化して独裁統治を強固にし、批判や反対する人々を抑圧する。三権分立が機能しないことで最高権力への監視が緩み、権力を握った個人や政党は「やりたい放題」が可能になる。
日本も三権分立の国だとされるが、内閣(行政)の力が強く、省庁のトップ(大臣)には国会議員が就任する(民間人の登用はごく少ない)。法律案の多くは省庁が原案を作成し、内閣法制局における審査などを経て、閣議決定が行われた後に議会に提出される。日本の議会は行政府が提出する法律案を審議し、その多くを成立させる承認機関の様相で、立法府が行政に従属しているのが実態だ。
日本では司法の行政に対する監視・牽制機能が強く発揮されていないことは、警察などが絡む冤罪事件の多くの裁判が長期間続いたり、警察や検察の強引な捜査に対して厳しく批判する判決が少ないことなどで明らかだ。日本での三権分立は行政が圧倒的に優位な位置にある。議会で多数を獲得した政権与党は、首相や大臣のポストを握ることで行政を掌握し、内閣が最高裁判事を任命し、最高裁長官も内閣が指名するのだから司法に対する影響力を持つ。
三権分立の互いに監視・牽制する機能を日本で活発に機能させるには、①現職の国会議員を省庁のトップに就けない、②省庁が原案を作成した法律案は内閣ではなく政党が提出する-などで行政と立法の分離を進め、最高裁長官の指名や判事の任命は議会に任せることなどが改革の出発点となるだろう。
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