米国のトランプ次期大統領は選挙中に、「エルサルバドルからの移民は『肥溜めのような国から来た』、メキシコからの移民は『犯罪や麻薬を持ち込む』『米国の血を汚している』」とか、報道機関関係者が銃撃されたとしても「気にしない」とか、共和党内の反トランプ派議員は「銃を向けられたらいい」など問題発言を連発した。
当選後にもトランプ氏は、「カナダがアメリカの51番目の州になる」とか、パナマ運河の「支配権を取り戻す」とか、「アメリカにはグリーンランドの所有と管理が絶対に必要だ」など問題発言に歯止めがかかっていない。問題発言が出るたびにマスメディアは詳しく報じ、結果的にトランプ氏の発言を広く周知する役目を担っている。
米国の次期大統領に決まった人物の発言だからニュースバリューがあり、多くの人が関心を持つだろうとの判断は間違いとはいえない。だが、問題発言が熟慮された政策ではなく、思いつきを垂れ流しているのが実態だったとすると、マスメディアはトランプ氏の発言を伝えたことでは正確に報道していたが、その発言内容についての検証は希薄で、結果としてトランプ氏の一方的な発言を広めることに貢献している。
トランプ氏の交渉手法は商業取引の駆け引きの延長上にあり、最初に過大な要求を突きつけて脅し、相手の譲歩を引き出して利を得るスタイルだとされる。政治的な交渉や外交交渉では相手のメンツを尊重し、感情的になりすぎず礼儀正しく振る舞いつつ落としどころを探ったりするが、トランプ氏の一連の発言は政治的・外交的には礼を失している。
そうした振る舞いが許されるのがトランプ氏だ。トランプ氏は「型破り」だとすでに容認されているから、マスメディアもトランプ氏の問題発言を面白がって報じているように見える。だが、マスメディアがトランプ氏の問題発言を次々と伝え続けると、やがて人々はトランプ氏の問題発言が社会的に容認された主張であるかのように受け止めるだろう。
マスメディアは、トランプ氏の発言が事実であると確認した上で報じているのだから事実を伝えているのだが、その事実とはトランプ氏が発言したというだけだ。発言内容を伝えた責任をマスメディアは負わない。これは、マスメディアがトランプ氏の広報媒体と化していることを示す。実現性が不明なトランプ氏の一方的な主張をマスメディアは垂れ流し、それがトランプ氏の影響力を高めている。
例えば、芸能ジャーナリズムはタレント事務所やタレントの広報媒体となって「共栄」している構図だ。芸能ジャーナリズムは人気タレントの記事を発信することでファンを楽しませる。トランプ氏の発言を垂れ流すマスメディアは、トランプ氏のファンを楽しませ、何を言い出すか分からないトランプ氏が、何を行うか分からない人物だというイメージを拡散することに協力している。
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