ソ連が健在だった頃、「共産主義とは国家権力に資本が従属する体制であり、資本主義は資本に国家権力が従属する体制」だった。言い換えると「共産主義は国家権力が資本を所有する体制で、資本主義は資本が国家権力を所有する体制」だ。市場主義(資本主義)を導入したはずの現在の中国を見れば、国家権力に資本が従属していることが理解できよう。
現在の世界は資本主義にほぼ覆われ、国境に関係なく商売をして利益を上げる米国の巨大テック企業に制約を課すことに各国は苦慮している。だが、資本主義に覆われた世界で、国家が主導する公共事業などの経済活動もある。コロナ禍における企業や人々への支援、大量のワクチン接種などは、利益拡大を目指す資本主義の枠組みでは行うことができなかっただろう。
ソ連の崩壊などで共産主義の影響力は国際的に著しく減退し、各国で法人税や高額所得者に対する所得税などが引き下げられた一方、非正規雇用が増えるなど所得格差は拡大し、中産階級の解体が進行した。社会的に平等・公平を目指すことよりも、経済活動などの自由が優先・重視されるようになり、「資本>国家」がより鮮明になったのが現在の世界だ。
格差の極端な広がりは各国で珍しくなくなり、「置き去り」にされた人々の不満が各国で社会の分断や政治対立を先鋭化させたり、急進的な政党・政治家の台頭につながっている。中産階級を厚くすることが社会の安定に寄与することは各国の歴史で明らかだが、中産階級の解体により膨大な富を得た経済人らは、現行の勝者総取り資本主義に大いに満足しているだろう。
20世紀に比べて制約が少なくなった資本主義により、不平等が拡大し、社会の安定性が損なわれた一方、巨大化したマネー経済により現物経済は振り回されるようになった。資本主義は限界を迎えている-との論が散見されるようになり、資本主義に代わる経済体制に移行すべきだとの主張もあるが、それが、どういったものかは具体的に示されない。
現実的に考えると、弊害が目立つとはいえ資本主義によって世界経済が動いており、世界から資本主義を一掃することは不可能だ。現在の資本主義から利益を得ている人々が世界には膨大に存在するだろうから、それらの人々は現行の資本主義で不都合はないと主張するだろう。何より、資本主義に代わる経済システムが具体的に示されないのでは説得力に欠ける。
そうなると、現行の資本主義を、社会的に容認できない部分の修正を行うことを繰り返すしかない。一部の人々ではなく、社会の多数を占める人々にとって、より良い社会になるように、絶え間なく資本主義の改良を続けていくしかない。資本主義を修正・改良できるのは、法規制を行うことができる国家だけだ。「資本<国家」になることは無理で、勝者総取りの資本主義の弊害の是正に取り組むことができる政党・政治家を増やすことから始めるしかない。
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