「若いころに聴いていたロックを聴くと、懐かしさとともに今でも精神が刺激され、活力を与えてくれる」と、長年続けた仕事から離れて年金生活に入った友人。1960年代や70年代に聴いていた米国や英国などのロックは、今でも聴くたびに新鮮さがあり、「おとなしく老いぼれていくんじゃねえよ」と呼びかけられているような気になるとする。
「懐かしがっているだけではなく、当時のロックを聴くとエネルギーがよみがえり、喝を入れられて元気を注入された気がするから、当時のロックは現代でも生きている」と友人。就職してから仕事に追われ、結婚して2人の子供を得て、その子供は独立し、夫婦だけの生活になってから、自分には趣味といえるものは音楽を楽しむことだけだと友人は気付いた。
誘われて地域の歴史を学ぶ集まりに参加したり、街路樹の根元に花を植えるボランティア活動に参加したり、クルーズ船に乗って旅行したりもしてみたが、どれも1回限りで続かなかったという。「趣味がない人は早くボケるんだって」と妻から嫌味半分の注意を受け、趣味といえるほど熱中したものが何かあったか?と自問した友人は、「そういえば若いころにはロックを毎日聴いていた」と思い当たった。
若いころに買ったレコードは大事に持っていた友人だが、聴くのは新しく買い直したCDだ。「CDのほうが手軽だ。レコードは面倒くさい。子供が置いていったミニコンポで鳴らしてるんだから、CDとレコードの音質などの細かな違いなんてはっきりしないし、気にもならない」と友人。高性能のスピーカーなどを買う気にはならないそうだ。
今でも若い人のロックバンドは世界中に多いから、そうしたロックは聴かないのかと聞くと友人は「運転中にラジオで耳にすることはあるが、これはいいと思った音楽に出合ったことはないな。ロックを装ったポップスばかりだ」と言い、「1960年代や70年代のロックには新しさがあったが、そうした新しさをさっぱり感じないよ、流れてくる音楽から」と厳しい。
20世紀半ばに誕生したロックは現在では一つの音楽ジャンルとして定着した。次々とデビューするバンドは売れようと個性を競うことに懸命となるが、かつてのロックのスタイルやファッションをなぞるだけだったりする。今のロックになく1960年代や70年代のロックにあるというロックの新しさは何かと聞くと友人は考え込み、やがて「レコード会社などの言いなりにならず、好きなように音楽を創造していると感じさせる自由さか」。
時代に関係なくジャズやクラシックが聴かれているようにロックも時代を超えて聴かれ続けていくだろう。「あのころのロックを今聴くと、演奏に拙さを感じたり、構成に単調さが否めなかったりするが、音楽にとって演奏の上手下手などは枝葉の問題であって、やりたいことをやるという活力と自由さを感じさせる解放感が音楽から伝わってくるのはロックだけだ」と友人は、過去の音楽を現在の音楽として聴いている。
0 件のコメント:
コメントを投稿