2025年2月15日土曜日

分析的な評価

 人間は、塩味・甘味・旨味・苦味・酸味の五つの味を感じ取ることができるとされている。塩味は塩・しょうゆなどミネラルの味で、甘味は砂糖など糖分の味、旨味は昆布だしなどグルタミン酸やグアニル酸・イノシン酸の味、苦味はコーヒー・緑茶や山菜などの味、酸味は酢などの味だ。苦味と酸味を感じることは腐敗した食物を察知するために重要だ。

 チョコレートや飴なら感じるのは甘味だけだろうが、料理の味は複雑に構成されている。料理では野菜や肉・魚などの素材の味が重要な要素だが、火の通し方でも素材の味は変化し、さらに調味料や油などの入れ方でも味は変化する。また、提供された料理の温度によっても、食べた時の感じ方が変わったりもする(例えば、ぬるい味噌汁などを不味く感じたりする)。

 実際の料理では、塩味が強すぎたり、甘みが強すぎたり、旨味があまり感じられなかったり等々のものがある一方、塩味や甘味や旨味が調和しつつ存在するものがあり、美味しい料理とみなされる。また、辛さや酸味など特定の味を強調する料理もある。苦味を感じさせる料理は「不味い」と感じさせるので歓迎されない(苦さを味わう料理もあるが日常食には少ない)。

 味覚には個人差があり、同じ料理を食べても感じ方は人それぞれだ。美味しいと誰かが言った料理を、それほどでもないと言う人がいたり、塩味が強すぎるなどと言ったりする人がいるのはフツーのことだ。美味しいと言った人の味の好みを知っている人なら、その人の好みの分だけ高く評価されていると、その人の言葉を割り引いて判断できるだろう。

 味覚は体験によって育つ。例えば、コメの様々な品種の味の微妙な違いを感じ取ることができなければ白米の味の奥深さを知ることはできまい。また、美味しい料理だけ食べていれば優れた味覚を得ることができるとは限らず、むしろ、美味しくない料理を食べる経験によって味を判断できる幅が広がり、提供された料理の味がどのレベルに位置するのかを判断できるようになる。

 テレビではタレントが街歩きする番組や旅番組が増え、レストランや食堂、カフェなどに入って提供された料理を食べるシーンが珍しくない。一口頬張ったタレントがすぐ「美味しい」「うまい」などと言うことは見慣れた光景で、時には大袈裟な身振りを加えて料理の味に感銘したことを表現する。咀嚼せずに味が分かるはずはないだろうが、タレントに求められるのは味の評価ではなく、提供された料理を褒めることなので咀嚼は余計な手間だろう。

 味の評価は人によって変わるので、客観性を求めるなら分析的な評価を行う必要がある。提供された料理を食べて、五味について個別に味わいを評価し、五味のバランスを確認し、さらに素材の味をどのように活かしているか、出汁やソースなどをどのように使っているのかーなどを確かめるなら分析的な評価となる。ただ、分析的な評価は他人に伝える時に役立つだろうが、1人で料理を楽しむ時には邪魔かも知れない。

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