2025年4月23日水曜日

終焉か再構築か

 グローバリズムは、人・モノ・カネ・情報が国境に関係なく世界を自由に動き回る現象だとされる。グローバリズムが進むと、やがて世界が1つの市場に統合されるとの期待もかつて現れ、歓迎された。だが現在、グローバリズムの進展によって惹起された様々な問題が各国で顕在化している。

 第二次大戦後、モノやカネの移動を自由にする方向へ各種の国際機構や条約が整備され、グローバリズムは着々と進んできた。インターネットの誕生は情報における国境の壁を無意味にし、各国間のビザ免除拡大などで人の移動の自由も拡大してきた。グローバリズムは冷戦後に始まった動きではなく、世界は1つの市場、さらには1つの共同体を構築する方向へと動いてきた。

 グローバリズムの進展に対して、現在顕著になっているのは国家主権の回復の動きだ。その代表が米トランプ政権で、グローバリズムの象徴ともいえる自由貿易体制に背を向け、高関税などで自国市場を囲い込み、米国1国の利益を優先する体制を構築しようとしている。欧州諸国で勢力を拡大する反移民・反EUの政党も国家主権の回復を目指す動きの現れだ。

 人の自由な移動はグローバリズムにより拡大したが、各地での紛争の多発などにより難民が増加し、豊かな国を目指す合法・非合法の移民も増加した。旅行者やビジネスパーソンなら、その移動先の国にとって負担にはならないが、難民や移民の殺到は負担増となったり、社会不安を招いたりする。米トランプ政権は大規模な移民の送り返しを始めたが、欧州も強制送還を容易にするように難民審査を簡略化する。

 グローバリズムにより自由に国境を越えて移動する「人」には、難民・移民は想定されていなかったのだろう。モノやカネは意思を持たないが、人は自分の意思で動くことができるので、紛争地や貧しい国の人々は動き始めた。歴史的に人類は移動を繰り返してきたのだが、国民国家の形成・広がりにより国境で管理されるようになっていた。難民・移民の増大を迷惑がるのも国家主権の回復を目指す動きだ。

 人やモノの自由な移動の制限を目指す国家が増え、グローバリズムの動きに揺り戻し(あるいは終焉)が見られる現在だが、カネや情報の自由な動きに対する反発・批判は現れない。カネや情報の自由な動きでは米国企業が世界市場で圧倒的な存在感を持っていて、カネや情報の自由な動きを制約することは米国の利益にならない。カネや情報においてはグローバリズムは健在だ。

 グローバリズムの動きを支えていたのは多国籍企業だ。サプライチェーンを各国に分散させて構築し、製品を世界で販売したり、マニュアル化されたサービスでフードチェーンなどを世界で展開した。制裁によりロシアがグローバル市場から排除されることにより、多国籍企業のグローバル戦略は後退を余儀なくされ、ロシアは国家主権を強化したようにも見える。

 グローバリズムは終焉するのか、再構築されるのか。再構築されるとしても、従来の延長上には戻らず、アメリカファーストのグローバリズムになるかもしれない。それが米国が世界から収奪する構造になるなら、米国の従属国以外は背を向けるだろう。変質したグローバリズムは世界の調和を目指すものではなく、新たな混乱をもたらすものになる。

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