2025年4月9日水曜日

軽視された調査報告

 2019年に北海道立の江差高等看護学院の男子学生が自殺し、遺族は、学校側が教員のパワハラを放置していたとして北海道を訴えた。北海道が設置した第三者委員会は調査結果で、学生に対して複数の教員が行った4件のパワハラを認定し、北海道は遺族に謝罪した。だが、裁判で北海道は、第三者委が認定した事例はパワハラにはあたらないなどと争っているという。

 第三者委の調査報告を受けて道保健福祉部の幹部が遺族に直接謝罪し、知事も記者会見で謝罪の言葉を述べたのだが、裁判になると一転、パワハラが自殺に直接結びついたとは言い切れないとか、第三者委の調査は客観的なものではないなどとして、自殺の賠償には応じない姿勢となった。謝罪はパワハラを対象にしたもので、自殺に対するものではないとする。第三者委による調査は北海道では有識者から意見を聞く懇談会という位置づけだという。

 兵庫県では第三者委が調査報告で、▽知事の11件の言動はパワハラにあたる▽告発文書は公益通報にあたる▽通報者捜しを行ったことや、文書を作成した元局長の公用パソコンを回収したことは公益通報者保護法に違反する▽告発文書の作成と配布を理由にした元局長の懲戒処分は違法で無効-などとし、「組織の幹部は、感情をコントロールし、公式の場では人を傷つける発言や事態を混乱させるような発言は慎むべきだ」と提言した。

 第三者委の調査報告を受けて斉藤知事は記者会見で、「県の対応は適切だった」「誹謗中傷性の高い文書との認識に変わりはない」「当時としてはやむを得ない適切な対応だった」などと公益通報者保護法違反を否定したという。第三者委の調査報告が出る前と変わらない主張で、選挙で勝ったこともあり、知事は非をいっさい認めない姿勢を貫いている。

 フジテレビが設置した第三者委は調査報告で、▽中居氏のトラブルは業務の延長線上における性暴力であった▽フジ幹部が中居氏の利益のために動いた▽社長ら3人は性暴力への理解を欠き、被害者救済の視点が乏しかった▽社内のセクハラに非常に寛容な企業体質があった▽取引先との会食にアナウンサーや社員が「利用されていた」▽取締役会が機能不全で内部統制の構築・運用面でも様々な問題がある-などとした。

 第三者委の調査報告を受けてフジテレビ社長は記者会見で被害女性に謝罪し、「会社の対応や企業風土、ガバナンスなどの問題について大変厳しい指摘を受けた。一連の問題について第三者委員会からの指摘を真摯に受け止め、会社としての責任を痛感している」と述べ、第三者委の調査報告を尊重する姿勢を明確にした。

 第三者委の調査報告をフジが全面的に受け入れたのは、社会的批判が強かったからだろう。反省し、改革を進めるポーズを取る以外にフジに活路はなかった。地方自治体は民間企業とは異なり、スポンサーからの圧力はなく、権力を行使する主体でもあるので第三者委の調査報告を軽視することができた。それは社会的な責任をうやむやにすることもできると示している。

0 件のコメント:

コメントを投稿