2025年4月2日水曜日

米国の中流階級

 政治的な主張の違いによる対立が激しくなり、米国社会の分断は深刻だと報じられる。政治的な対立は選挙戦などで可視化されるので、対立構造は外部からも理解しやすい。自説に固執し、寛容さを失った人々がトランプ大統領を誕生させ、そのトランプ政権は世界の新たな分断を画策・実行している様相だ。

 分断は経済面でも顕著となり、▽米国全体の富の3分の1を所得上位1%の世帯が保有し、下位50%の世帯は2%しか持たない▽上位10%の所得が全体の51%を占める▽資産残高上位10%のシェアは7割を超す-など所得・資産格差が深刻化している(所得・資産格差の拡大を深刻な問題と見るか、当然視するかは政治的な立場により異なる)。高所得者層は不動産価格や株価上昇の恩恵を受け、低所得者層はインフレもあって生活を維持するための支出に追われる。

 所得や資産で格差の拡大が続き、富裕層が少しずつ増えるとともに貧困層が増大して中流階級は縮小している(貧困層に脱落する人が増えた。中流階級の割合は1971年の61%から2021年には50%に減少)。経済活動により得られた富の配分を多くの人々に行うことで厚い中流階級が形成されたのだが、人口比では少数の富裕層が収入を増やすには分け前を増やすしかなく、富の配分は偏るようになった。

 中流階級の減少は中流階級の解体へと進み、所得や資産で格差の拡大は続き、人口比では少数の富裕層への所得や資産の集中が続くだろう。こうした偏りは国際関係にも反映され、富の米国への集中を促すことが行われている。つまり中流階級の解体は世界各国で進むが、中流階級から流れ出す富の奪い合いで米国は先行している。

 持たざる人々の反乱は米国内では、例えばトランプ候補への支持拡大などとなって現れるが、政策変更を求める超党派の反政府の抗議活動としては現れない。チャンスは誰にも平等だとの神話が残存し、「敗者」に対して自己責任だと見られるのは個人主義が定着した社会だからだろう。

 富の偏在は、勝者総取りの様相を強める資本主義経済の到達点だ。製造業から金融や情報・IT産業に比重が移行した資本主義では、雇用総数は減少する一方、収益は拡大するので、富の偏在が促進される。金融や情報・IT産業は知的産業とのイメージが蔓延し、高学歴者が従事するとのイメージもあり、高所得が当然視される雰囲気もあるので富の偏在は是正されない。

 中流階級の解体により、少数の富裕層と多数の低所得者層に分かれた社会は、かつての貴族層が君臨していた社会を連想させる。貴族層の独裁を覆して民主主義社会が誕生したはずだが、自由選挙でも、所得や資産の不公平・偏り・歪さを是正する政策を主張する政治家や政党は政権を取ることができないのが現実で、中流階級に属していた人々は中流階級の解体に無力だ。

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