2025年6月21日土曜日

失ったもの

 2022年2月から始まったウクライナ侵攻におけるロシアの死傷者数が約100万人になったと英国防省が発表した。うち死者と行方不明者は約25万人で、ロシアにとって第二次世界大戦以降で最大の人的損失だとする。ソ連が行ったアフガニスタン侵攻の死者1万5000人、負傷4万人より圧倒的に多い(アフガン侵攻はソ連崩壊の一因になったとされる。ゲリラ側の死者は推定60万人)。

 多大な死傷者を出し続けているウクライナ侵攻だが、ロシアは停戦に動く気配を見せていない。ウクライナに対するドローンやミサイルによる攻撃が続いていると報じられるが、ロシア兵などによる攻撃も続いているだろうから、ロシアの死傷者数は増え続けるだろう。英国防省は「ロシア指導部は、国民やエリート層の戦争への支持に悪影響を及ぼさず、兵力の損失を補うことができる限り、多大な損失を容認する」としている。

 死傷者数が100万人に達するとはロシアは開戦前に想定していなかっただろう。もし死傷者が100万人にも達すると試算したなら、軍事力を行使することに慎重になったかもしれない。だが、ロシアはもう引くに引けない。ロシア国内の雰囲気が報じられることは少なく、厭戦・反戦の気配が漂っているのか定かではないが、国内が戦争支持でまとまる間は戦争を続けることができるだろう。

 ロシアがウクライナ侵攻で国際的に得たものは、侵略国との烙印だ。ロシアは軍事的に領土拡大を続けるのではないかとの疑念が欧州各国に広がり、信頼できない国だとの認識が定着したように見える。さらに数々の制裁を欧米などから課され、欧米経済と大幅に切り離され、頼るのは中国やインド、イラン、北朝鮮に偏るなど多くのものを失った。

 失うものがない時に人は、しばしば無責任な言動・振る舞いに及び、相手に反撃能力がないと見ると、いくらでも攻撃的になることがある。だが、失うものがあり、失うものが大きいと判断すると、慎重に振る舞う。失うものは、経済的な利益、名誉・名声、信用・信頼、影響力、人望、健康・生命など様々あり、どれを失うのかは状況によって異なるが、失ったものを取り戻すのは簡単ではないだろう。

 国家も同じだ、無責任な言動・振る舞いにより過度に攻撃的になると、失うものがある。ロシアやイスラエルは過剰とも見える攻撃を続け、人命や人権、他国の主権、国際秩序などを軽視する国家だとのイメージを定着・拡散させた。世界の人々からどう見られるかを軽視・無視する国家は民間人の殺害を続け、残虐行為を辞さない。残虐な国家だと世界の人々から見られることを気にしないロシアやイスラエルは多くのものを失っている。

 欧米諸国は、ロシアの残虐行為を非難するが、イスラエルの残虐行為に対しては黙るか支持する。欧米諸国がダブルスタンダードだとの批判は以前から多く、欧米諸国はイスラエルの行動を容認することで、人命や人権を尊重する公平な諸国だというイメージを完全に失った。ロシアが得たものは侵略国との烙印であり、イスラエルが得たものは強硬な軍事優先国家だとのイメージであり、欧米諸国が失ったものは世界平和に貢献する諸国だとのイメージだ。

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