2025年6月11日水曜日

TACO理論

 英語の「chicken」には「臆病者」「腰抜け」「臆病な」の意味もあり、chicken out は「おじけづいて、やめにする」だ。最近、この言葉で語られているのがトランプ大統領だという。TACOは「Trump Always Chickens Out(トランプはいつもビビってやめる)」の略語で、ウォール街のトレーダーや世界の投資家に広まっていると報じられた。

 この略語は英フィナンシャル・タイムズ紙のコラムニストが作ったものだ。トランプ政権が他国に「高関税を課す」などと高らかに一方的に宣言しても、株価や米国債の価格が下がるとすぐに撤回したり、引き下げるなど、二転三転する関税政策を皮肉り、すぐに方針変更するかもしれないからと「TACO理論」を紹介し、トランプ政権の方針変更を見越した取引「TACOトレード」を推奨した。

 記者からTACOについて質問され、トランプ大統領は「その言葉は絶対に口にするな」「最も気に食わない質問だ」などと不快感を露わにしたという。また、多くの事態が正常化に向かい、FRBは利下げを行い、景気後退は訪れず、関税にもかかわらずインフレ率は跳ね上がらないことなどが起きるかもしれず、TACOを前提としたTACOトレードが今後も続くことに賭ける投資家の存在が伝えられた。

 ディールが得意だというトランプ氏は各国に対して、最初に大きくふっかけて、びびった相手から譲歩を引き出し、実利を獲得する戦略なのかもしれない。そうした交渉スタイルは自国(というより自政権)の利益確保を最優先した外交なのだろうが、国際強調という建前を無視し、既存のアメリカ主導による国際秩序を蝕んでいく(米国は各国から信頼されなくなって行く)。

 トランプ政権にとって、譲歩に動く各国の反応や株式・債券など市場の反応に応じて、高関税などの要求を緩和したり、引っ込めたりすることはディールの内なのかもしれないが、側からはトランプ政権がビビっているようにも見える。だからTACO理論が生まれた。ふっかけた条件を緩和したり、引っ込めたりするのもディールの内だとトランプ政権が認識していたとしても、客観的にはトランプ政権がビビったと見られる。

 トランプ氏は、攻撃されると怒りが爆発して強く反撃し、口汚く罵ったりするが、笑われたり皮肉られたりすると戸惑い、質問を一蹴したりして、対応法が決まっていないように見られる。感情的に動く人物なので、ジョークのネタにされたりすると、巧妙にジョークで咄嗟に対応するなどということができず、怒りを爆発させるか、困惑して黙る。このタイプの政治家は日本にも多そうだ。

 ニワトリなど小型の鳥類は自然界では捕食者に狙われる存在だ。常に警戒心が強くなければ生き延びることができず、食われるだけだが、その様子から臆病者と連想したのかもしれない。トランプ政権の米国に対抗できる中国やEUは真っ向から反撃するが、大半の国は米国に対して、言い返すこともできず、条件交渉に持ち込むのが精一杯だ。臆病者のように振る舞うしかない各国と、強者を装うTACOのトランプ政権は似た存在だ。

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