2025年9月10日水曜日

縮む公共事業

 国や地方自治体などが税金を投入して行う公共事業は、収益を上げることが目的ではなく国民生活の向上が目的だ。収益が見込めず民間に任せていたなら供給されないだろう財やサービスを供給することが公共事業の責務だ。全国各地の道路や橋梁、港湾、空港、上下水道、ダム、防災施設、公園、学校、病院、図書館などの整備・維持や、ごみ収集、環境保護などの事業が公共事業として行われる。

 かつて鉄道輸送も、全国の人々の移動の利便性を確保するため公共事業として行われていたが、累積債務が膨れ上がったことから民営化され、公共事業ではなくなった。公共事業ではなくなったので採算性に乏しい路線は次々と廃止された。同様に民間事業者が運行する路線バスも採算性や運転手の確保難などで各地で次々と廃止され、地方自治体がコミュニティーバスで路線を引き継いだりする。

 学校や病院など民間事業者が参入している分野があるが、収益性重視の経営が行われ、収益が見込めなくなると料金を値上げしたり、撤退する。赤字でも財やサービスを供給しなければならないのが公共事業で、赤字でも社会として「やらなければならない」ことが公共事業として行われる。一方、公共事業は政治の強い影響を受けるため、車がほとんど通らない道路が整備されるなど無駄な事業も行われる。

 公共事業は営利事業ではない。だが、市場経済の論理が持ち込まれ、税金に支えられた運営が赤字垂れ流しだと批判されることがある。公共事業は収益を求めるものではなく、社会に必要だから国や地方自治体が行うものであり、例えば、ごみ収集を有料化して経費を賄っても利益が出たとすれば、料金の引き下げ要求が住民から出るだろう。

 公共事業は国や地方自治体が行う経済活動で、民間が行う経済活動とは異なる原理で動いている。だから、民間の感覚で収益性を持ち出すと、大半の公共事業は批判の対象になる。そして、民間企業に経営を委託すると、例えば、図書館では「客」集めが重視され、様々な図書や新聞・雑誌にアクセスする場であることが次第に軽視されていく一方、経費削減が進められ、収益をもたらさない利用者は軽視されたりする。

 人口減少が続く時代を迎えて公共事業は見直しを迫られている。補修や再建が必要な構造物が増え、利用者が減った公共施設の維持などが負担となり、必要な経費は増えるが税収は逆に減る。人口減少は早くから指摘されていたが政治の動きは鈍く、経済停滞を長引かせた政府の経済政策もあって、「縮む日本」が現実化した。

 公共事業を支えていた税収が減るのだから、公共事業も規模を縮小させるしかない。公共事業として供給されるサービスには民間事業者に委託しても継続できるものがあり、民間に委託する事例が増える可能性がある。民間事業者は収益を重視するだろうから、有料化や利用料金の引き上げ、サービス範囲の縮小などが繰り返される可能性があるが、公共事業によるサービスは独占的な事業であることが多く、住民は従うしかない状況になるだろう。

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