英ロンドンの王立裁判所の建物の壁にバンクシーによる新しい壁画が描かれていた。壁画には、判事が、地面に横たわる抗議者を小槌で殴打し、抗議者が持つプラカードに血が飛び散る様子が描かれていたとBBC。数日前にロンドンで、親パレスチナ団体に対する活動禁止命令への抗議デモが行われ、約900人が逮捕されていたことと関係があるようだ。
バンクシーの作品は高値で取引されたことがあり、今回の壁画も高額になると見られたが、裁判所の建物が歴史的建造物に指定されていることを理由に当局は壁画を消した(作業員が約2日かけてこすり落としたという)。この作品を壁ごと切り取って売却すれば高額の臨時収入になり、壁の修復代金など余裕でまかなえたであろうが、当局は壁画を抹殺することを選んだ。
バンクシーが匿名であり続けるのは、街中の建造物に無断で壁画を描くストリートアートを主な表現の場にしているからだ。ゲリラ的に描いた壁画が高く評価されたとしても、匿名では本人が売却代金を得ることは困難だろうが、以前には代理人がいて、現在はネットで版画作品などを販売しているというから活動資金には困ってはいないようだ。
バンクシーの正体を知っている人は結構いるそうだが、社会批判や風刺が多い壁画で話題になったこともあり、個人名を知られるとバンクシーの主張に対する批判が個人攻撃として現れることは間違いなく、匿名のままで活動することが無難か。覆面アーティストとして世界的な知名度を得ている現在、匿名でいることを止めるメリットも乏しそうだ。
表現者は創作意欲に駆り立てられて次々と作品を仕上げていくと一般に思われているようだが、作品は評価されず売れないのでは生活の維持に支障をきたす。貧しい暮らしの中で創作を続けても、例えば、死後に高く評価されるようになることはまず起こらない。匿名のバンクシーは名声を得ているのだから、創作意欲に衰えは見られないか。
バンクシーは個人だと見られているが、匿名なのだから複数人がバンクシーの名のもとに活動することも可能だ。匿名は正体を隠す目的だろうが、運動体であることを隠すには匿名で個人であるように装うことが有効だ。運動体であるなら、外国人や難民・移民の表現者をメンバーとして活動することが可能になる。バンクシーの壁画は型紙を作って、建物にスプレーなどで吹き付けて描くのだろうから、個性は共有できよう。
街中の建造物に無断で壁画や文字などを描くストリートアートは建物の所有者にとっては迷惑だろう。大半の「作品」には何の価値もなく、消す手間がかかるだけだ。だが、画壇にも画商にも認められない表現者には、バンクシーのようにストリートアートを表現の場にすることも選択肢だ。もちろん、バンクシーのように評価されて名声を得ることは困難だろうが。
0 件のコメント:
コメントを投稿