2025年9月13日土曜日

ケサランパサラン

 ふわふわと風に乗って空中を漂う白い綿毛のようなものがケサランパサランだ。これは「つる性植物の種子。直径3~5cmほどの種髪(綿毛)をもつ植物は、園地内ではシタキソウ、テイカカズラ、サカキカズラ」「果実に付く綿毛を冠毛(かんもう)、種子に付く綿毛を種髪(しゅはつ)と言う。タンポポの果実(痩果)に付く綿毛は冠毛、サカキカズラの種子に付く綿毛は種髪」(吉野熊野国立公園・宇久井ビジターセンターHP)。

 ガガイモの種子だという説もある。風に乗せて種子を遠くに運ばせるために綿毛をつけた種子を放出する植物はいろいろありそうだ。他にも動物の毛玉だという説もあるそうで、過去には、正体不明の生物だとか、さらには妖怪だと取り沙汰されていたこともあったという。確かに、空中を漂う風情は雪虫にも似て、何かの生物かと早合点する人がいたとしても不思議ではない。

 正体不明だった頃には「捕まえると幸せになる」とか「持っていると病気にかからない」などとされて家宝として大切に扱われたという。また、「桐の箱で飼うと、おしろいを食べて増える」などと信じられ、「年に一度だけしか見てはならない」など禁忌が付随していたことも幸運をもたらすとの言い伝えを信じさせることに効果があっただろう。

 都内に住む友人は昨年、旅行先で初めてケサランパサランを見た。捕まえようと腕を伸ばすと、その勢いが風となってケサランパサランはふわっと逃げる。何度か繰り返してケサランパサランをやっと捕まえたそうだ。「大事に持ち帰って、大切にしているか?」と聞くと、「娘が気味悪がっていたので、捨ててきた」と友人。

 ケサランパサランにまつわる言い伝えを話し、「残念だったな。持ち帰って家宝として祀っていれば、幸運をもたらしてくれたかもしれないのに」と言うと、友人は「幸運グッズだったのか。娘はパワースポット巡りが好きで、俺もたまに付き合わされる。ケサランパサランが幸運グッズだと知れば、欲しがるかも知れないな」と笑った。

 空中を漂うケサランパサランを思い出して友人は「人生を感じた」。どういう意味かと問うと、「右に流され左に流され、上がったり下がったり、風まかせだ。これまで自分の意思で方向を決めて生きてきたように思っているが、その時々の社会のいろいろな風というか力を受けて漂っていただけかも知れない」。「初めて聞く人生哲学だ」と言うと、「大きな流れの中で生きることしか人間にはできないのかもな」と友人。

 「自由意思の否定か?」と聞くと、友人は「違う。誰もが自分の意思で人生を切り開いているんだ」、続けて「だが、個人はミクロな人生を生きるだけで、世の中というか世界の状況の影響を受ける。自分を取り巻く状況を無視して生きることはできまいから、マクロで見ればケサランパサランのように漂っているだけかも知れない」。ケサランパサランから人生論を引き出した友人は、今度捕まえたなら「大事に持ち帰る」と言い、娘が幸運グッズと知れば「横取りされるだろうな」と付け加えた。

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