2025年12月13日土曜日

実用車へシフト

 欧州で販売されているEVの多くは、走行可能距離の長さを競って大量の電池を搭載し、それが重量増と高価格につながり、結果として中型車〜大型車での展開となっている。高性能の電池を自給できない欧州メーカーより、電池を自給できるコスト面で圧倒的に有利な中国メーカー製EVが市場シェアを徐々に拡大した。

 欧州連合(EU)は安価な中国製EVに対する反補助金調査を実施し、中国政府の国家補助による低価格で市場を歪めているとして相殺関税措置を発動した。だが中国製EVは新たな関税を課されて勢いは弱まったものの競争力を失ってはおらず、プラグインハイブリッド車(PHV)の販売増などもあって中国車の存在感は増している。

 気候変動対策が最優先だとしてEUはEVへのシフトを政治的にメーカーに強制したが、肝心の高性能な電池を自力で大量生産できるメーカーが欧州にはなかった。開発では日本が先行し、現在では日中韓メーカーが世界的な生産主体となっている高性能な電池の供給について慎重に検討せず、EVシフトを強制したEUの理念先行政策の杜撰さの結果が、中国製EVの欧州進出増加だ。

 そのEUが「小型EV」枠を新設すると報じられた。名称は「E Car」で、日本の軽自動車規格を参考にして小型の電気自動車の規格を決めるという。車体の外形寸法やモーター出力などに上限を設定することで過度な競争を抑制し、開発コストを下げて、低価格の欧州製EVを普及させる狙いだ。ただし、中国から輸入されるEVを排除するため、EU内で生産されたEVのみが「E Car」規格に適合する仕組みだという。

 これは突然出てきた話ではなく、昨年7月にステランティス会長とルノー・グループCEOは、安全規制を緩和した小型車カテゴリーの創設を提案し、同9月に欧州委員会の委員長は新たな小型低価格車カテゴリーの開発に取り組む方針を示し、「E-car」との名称も示唆していた。今年6月にはステランティス会長が、欧州では規制による高価格が消費者需要を圧迫しているとし、日本の軽自動車のような小型で安価な車両を開発する必要があると述べ、ルノーCEOは、車体のサイズに応じて異なる規制を導入して小型車に対する負担を軽減することを提案した。

 テスラや中国メーカーに対抗して欧州メーカーがEVで主導権を取るための「E Car」規格だが、中国メーカーはすでに欧州での生産に動き始めており、新規格に合わせて軽自動車EVでも欧州で生産された中国車が増殖する可能性がある。政治的に動くEUだから、その時には中国車を排除するため新たな規制を考案するかもしれない。

 大きく重いEVは「環境に優しい」とはいえない存在だ。大きく重いEVは通勤や買い物など日常使いに向いていないことは明らかで、軽自動車並みの「E Car」が誕生するなら、EUでも社会全体で見ると環境負荷を減らすことができるだろう。欧州メーカーの車はモデルチェンジのたびに大型化し、かつての米国車のフルサイズ並みに肥大した。日本の軽自動車を参考に、実用車のあり方を再考する機会に「E Car」規格はなろう。

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