ユダヤ人は人種的にはセム族とされるが、セム族にはユダヤ人以外にアラブ人やシリア人、エチオピア人なども含む。パレスチナを追い出され、世界に散らばった2000年以上のディアスポラ(離散)の間に混血も進み、現在もユダヤ人は世界各地に居住しているので、ユダヤ人の定義は「ユダヤ教を信仰する人々」とされ、人種や民族だとは見なされていない。
ホロコーストは1942〜1945年にナチス・ドイツが行った組織的かつ計画的なユダヤ人大量殺戮のことで、各地の強制収容所での毒ガスによる大量殺戮や各地での大量射殺などで約600万人のユダヤ人が犠牲となった。ユダヤ人だけが殺されたのではなく、ほかにロマ(ジプシー)が約50万人、精神障害者(ドイツ人も含む)が約7万人殺されたという。
ユダヤ人を人種と定義したのがナチス・ドイツだ。ナチス・ドイツはドイツ人を支配人種であるアーリア人であるとして賛美し、ユダヤ人などを非アーリア人として劣等人種であるとした。アーリア人種の純粋さを保つことを重要視する一方、アーリア人であるドイツ人が世界を支配するためには、ユダヤ人を排除・絶滅させる必要があると組織的かつ計画的にユダヤ人の大量殺戮を行った。
ナチス・ドイツにとらわれたユダヤ人の中にはキリスト教に改宗した人も多かったと言われるが、ユダヤ人を人種と見るナチス・ドイツは改宗したユダヤ人も含めて大量殺戮した。ユダヤ教の唯一神であるヤハウェは、律法を厳格に守るユダヤ人を救済するとされる。ナチス・ドイツによる死に直面したユダヤ人は彼らの神に救いを求めて祈っただろうが、死を免れることはできなかった。約600万人の中に死後に救済される人がどれだけいるのかは、まさに神のみぞ知る。
イスラム教の唯一神はアッラーだ。世界を創造した神であり、人々に信仰に伴う様々な規範を守って暮らすことを要求し、最後の審判の日には人々を裁く神だ。イスラエル軍によって徹底的に破壊されたガザでは約7万人が殺害され、救援物資の搬入が制限されて餓死に面した人々がいて、ジェノサイドが進行していると諸国が批判した。ガザの人々の多くはイスラム教徒だろう。死に直面した多くの人は神に祈ったかもしれないが、ガザにおける大量殺戮を止めることはできなかった。
ヤハウェもアッラーも裁く神である。裁く対象は信者で、神が示した生き方を忠実に実践するよう人々に求めるので、各自の信仰のありようが判断基準となる(神を信じる信者を裁く神であるから、信者ではない人々に対しては冷酷だ)。仏教には人々を救う諸仏がいるが、唯一の絶対神は人々を救済する神ではない。おそらく現世における人間の生死に神は関心がないから、現世で救いを求める信者に神は何もしない。
ホロコーストを経験・記憶したユダヤ人はやがてイスラエルを建国し、現世において神に救いを求めても無駄だと悟り、自らを守るのは自らしかないと決意した。ユダヤ教を信仰する人々が建国した国が、周辺に住む人々を無慈悲に殺戮することを続けているのは、現世においてヤハウェもアッラーも姿を現さず、死に直面した人々が唯一神に救済を求めても無駄だと示している。
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