2025年12月17日水曜日

威嚇の作法

  矢継ぎ早とは「次から次と続けて素早く行う様子」だ。記者が矢継ぎ早に質問した-などと使う。中国が日本に対する批判や交流制限・威嚇・嫌がらせを続けていて、中国政府が矢継ぎ早に対日批判・威嚇などを繰り出しているように見えるが、中国に詳しい人によると、習近平氏の意向を慮って政府内の各部局が競い合って各々の対日批判・威嚇などを繰り出しているのだという。

 政府内の各部局が手柄を競っているのか、何もしないことで批判されることを恐れて慌てて対日批判・威嚇などを行っているのか不明だ。だが、矢継ぎ早に見える中国の対日批判・威嚇などは統制のとれた行動ではなく、てんでに習近平に対する忠誠を競った行為なのかもしれない。矢継ぎ早の対日批判・威嚇などは、「射て」の命令があったと判断して各部局が勝手に「矢を放っている」気配だ。

 沖縄南方の太平洋上で中国機が航空自衛隊機に対してレーダー照射を行った。中国機が照射したレーダーはミサイルの照準を合わせるための火器管制用モードだった可能性があり、交戦のきっかけとなる恐れが高かった。火器管制用モードのレーザー照射に対して、米軍なら即座に反撃していただろうとの見方もある。

 このレーザー照射を行った判断は、中国軍のどのレベルで行われたのかは不明だ。中国軍のトップなのか、海軍のトップなのか、艦隊のトップなのか、飛行隊のトップなのか、当該機のパイロットなのか。中国軍の判断であるとすれば、一触即発の交戦の可能性を織り込んだ日本に対する明らかな挑発だ。だが、中国軍が日本に対して交戦を仕掛けるのなら、東シナ海においても大規模な部隊展開を伴わなければ、太平洋に出ていた空母打撃群を孤立させてしまう。

 当該機のパイロットなど中国軍の末端の判断で勝手にやったことなら、中国軍の統率に欠陥があることを示す。鉄砲玉が送り込まれて対立する組の出入りが始まるのはヤクザ映画でよくある設定だが、歴史を振り返ると末端の兵士の「暴走」が戦火を拡大させた例がある。当該機のパイロットが、日本に対して何をしても許されると判断したのか忠誠心からかは不明だが、勝手に火器管制用モードのレーザー照射を行ったのなら、統率の取れていない中国軍の危うさを示す。

 民生部門が勝手な判断で対日攻撃に動くことと、軍事部門が勝手な判断で対日攻撃に動くことの深刻度は異なる。かつての日本の関東軍のように、軍の一部が独自の判断で行動することの代償は大きい。中国軍(人民解放軍)は共産党の軍隊であり、党の指導という文民統制がなされているはずだが、1党独裁→個人独裁となった現在の中国で、軍内部が手柄を競い始めると、末端が暴走する可能性が出てくる。

 1発の銃弾が戦争につながった例は珍しくないのだから、次にミサイル発射を連想させるレーザー照射は許される行為ではない。相手を脅したり怯ませたりするために行う威嚇で、かかってこいと挑発するのは威嚇の作法に反している。殴るぞと威嚇して、殴り合いになってしまっては威嚇の意味はない。統率に緩みがあって実戦経験が乏しい軍隊は危険だ。

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