2025年3月12日水曜日

大切なもの

 人生にとって最も大切なものは何か。愛することか、カネを得ることか、家庭を築くことか、何かの共同体に所属することか、出世することか、社会的に高い地位につくことか、何かの規範に則って生きることかーどれも人生にとって大切な要素だし、個人によっても様々に分かれるだろうし、人生の段階によっても変化するだろう。生き延びることが最も大切だという状況にある人もいるだろう。

 日々の生活は生きるために必要なものだが、生活そのものが生きる目的になるものではない。仕事は生活の糧を得るためのもので、仕事を自己実現の場にする人もいるが、誰もが天職だと信じる仕事に巡り合うことができるわけではない。それに、衣食住を確保し、家族と平穏に暮らす手立てが別にあるなら、仕事にこだわる人は少ないだろう。

 趣味や社会活動など何か打ち込めるものがあっても、それが人生の最も大切なものであるとは限らない。熱中するのは面白く、楽しかったり、誰かの役に立つなどの使命感は大切だが、その対象は人によってまちまちだし、そうした対象を持たない人もいる。熱中している人にとって熱中は人生に大切なものだろうが、一般化して、何かに熱中することが人生にとって最も大切だとはいえない。

 誰の人生にもカネは必要なもので、ほとんどの人はカネを欲しがっているので、カネは人生に欠かせないものだ。だが、必要なものが最も大切であるとは限らない。安楽に一生暮らすことができるカネを持っていれば、あくせくカネを稼ぐことにこだわる人は少ないだろう(10億を11億にーなどとカネを増やすことに取り憑かれる人はいそうだが)。

 愛することも人生には欠かせないもので、愛の対象は人であったり、郷土であったり、人類であったりと多彩だ。誰かを愛し愛されることで人は人生に安定などを感じたりするが、愛することと愛されることが常に同時に存在するとは限らない。無償の愛であっても、誰かや何かを愛することは人生を豊かにしてくれるだろうから、愛することは人生において大切なことだが、誰もが無償の愛を実践するわけではない。

 誰かを愛することが家庭を築き、家族を築くことにつながる。だが、家庭を築かずに生涯を終える人も増えた現在、家庭や家族が人生で最も大切だとすることは難しい。家庭や家族が大切なものであることは確かだが、家庭や家族の価値を強調しすぎると、そこから疎外される人が多すぎるとともに、価値観の押し付けは反発を誘引する。

 人生にとって最も大切なものは人それぞれで、特定の何かを普遍性を持つ最も大切なものとすることは難しい。また、人は人生で最も大切なものを必ず持つとも限らず、大切なものを見失ったり、何が大切かを考えることもしない人もいよう。愛だ、金だ、仕事だなどと多くのものが人生には大切だとする人もいる一方、日々を生き延びることで精一杯の人なら人生のことなど考える余地はないかもしれない。

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