「世界はディープ・ステート(闇の政府)が操っている」「トランプ氏はディープ・ステートから世界を救おうとしている」とか「9.11テロには米連邦政府が関与している」「東日本大震災は人工地震だ」「ワクチンにはマイクロチップが埋め込まれている」「ユダヤ人は世界支配の陰謀を企てている」などの陰謀論は、SNSの世界的普及もあって、何かの大きな出来事があると現れる。
陰謀論は、①特定の方向へ人々の意識を誘導するために仕掛けられたもの、②大きな出来事に対する人々の独自の解釈が広まったものーに大別できる。フェイクニュースは事実を歪めて改変して伝えるものだが、陰謀論は事実よりも解釈に重点を置いて伝えるもので、「新聞やテレビが報じることを鵜呑みにするな」などとマスメディアへの不信感を煽り、これが「隠されていた真実」だと主張する。
マスメディアが報じる情報を信頼する人々は陰謀論を無視するか笑うだけだろうが、陰謀論にとらえられる人もいる。研究者によると、陰謀論は▽自己閉塞感や苦しく辛い状況に対する不平不満の吐け口になる▽多くの人が気づいていないことを自分は知っているとして自己肯定感や自尊心が満たされる▽同調者の存在で社会的な認知や肯定感が与えられたように感じるーため、のめり込んでしまうのだという。
陰謀論は自分の解釈を最優先して世界を見ている状態だ。マスメディアに踊らされずに「自分の頭で考えることが大事」などとして独自の解釈を生み出したり、SNSなどに現れた突飛な主張に同調してしまう。陰謀論にとらわれている状態は主観だけで世界を見ている状態でもある。その主観に都合のいい情報だけを積み上げていくので陰謀論は強化される。
主観だけで世界を見ている状態とは、事実や客観性や合理性は軽視し、主観に合致する事柄だけを集めた組み立てられたストーリー(物語)で世界を見ている状態だ。そうしたストーリーは歴史意識や宗教と親和性がある場合があって、偏狭な民族意識などと融合すると排他性が高まったりし、「敵」を容赦なく攻撃・排除するための正当化に持ち出されたりする。
主観だけで世界を見ている人は妄想にとらわれている人と似ている。妄想は「根拠がなく不合理なことを事実と確信すること。事実や論理では訂正できない主観的な信念」だ。対人関係では関係妄想、被害妄想、注察妄想、嫉妬妄想、影響妄想などがあり、気分に伴うものには誇大妄想、被愛妄想、卑小妄想、貧困妄想、罪責妄想などと多くの妄想がある。
陰謀論と妄想の違いは、陰謀論は現実に起きたことを解釈するが、妄想は現実には起きていないことを起きていると主張する。主観だけで世界を見ていることと事実や論理を受け入れないことでは共通するが、陰謀論を唱える人=妄想にとらわれている人とはいえない。妄想に強くとらわれている人は精神病理学の治療対象となるが、陰謀論にハマっている人は治療対象にはなりにくく、周囲が根気強く説得するしかない。
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