米国では憲法を修正するには高いハードルがある。手順は、①連邦議会の両院の3分の2の賛成による修正の発議、②全ての州の議会の4分の3の承認-だ。「1945年以降の修正回数は6回だが、修正案の提出は合衆国憲法の制定以降11500件以上ある。 それらの多くは連邦議会における委員会段階で廃案とされ、連邦議会の発議要件を満たすものは非常に少ない。さらに、連邦議会によって発議されたものの、州議会による承認がなされていない修正案が6件ある」(国会図書館)。
社会の分断が顕著になり、連邦議会で対立を続ける共和党も民主党も圧倒的多数を確保できていない現在の米国で、憲法の修正はほぼ不可能だ。憲法で大統領の任期は1期が4年と規定され、1951年に憲法修正22条で3選の禁止が明確化され、2期8年が定着している。2期目のトランプ氏に3期目はなく、2029年に権力の座から去らなけばならない。
一方、プーチン氏も習近平氏氏も、それぞれ憲法を改正して最高権力者としての続投を可能にした。過酷な弾圧によって反対者や批判者を排除したり、黙らせたりして国内を「まとめた」ことで権力者として君臨して、憲法改正を支持することが忠誠の証しとすることで憲法改正を可能にした。同時に、両国における憲法の「軽さ」を世界に見せつけた。
プーチン氏も習近平氏も政敵を排除してきた。汚職や政治的な誤りなど排除する理由には事欠かず、排除は正当化された。政敵の政治的な生命から実際の生命までプーチン氏も習近平氏も容赦なく奪ってきた。当然、政敵とされ社会的に抹殺された人々や、汚職などを名目に粛清された人々の親族はプーチン氏や習近平氏に恨みを抱くが、プーチン氏や習近平氏が君臨する社会においては沈黙せざるを得ない。
憲法を改正してプーチン氏や習近平氏が続投したのは、最高権力者にとどまり続けなければ自身の身の安全を保つことができないからだ。プーチン氏や習近平氏の後継者が忠実な部下であればプーチン氏や習近平氏が築いた体制は維持されようが、プーチン氏や習近平氏に批判的だった人物・陣営が後継権力を握れば、プーチン氏や習近平氏の統治が検証され、プーチン氏や習近平氏にも責任追及が及びかねない。プーチン氏も習近平氏も身の安全を保つには権力にしがみつくしかない。
トランプ氏は司法省で演説し、自身を捜査した検察官や政敵への報復を宣言し、「政府から悪党や腐敗勢力を追放し、彼らの悪質な犯罪や深刻な不正行為を暴露する」と述べたと報じられた。だが、トランプ氏に3期目はなく、いずれ民主党候補が大統領に就任すればトランプ氏の「報復」は覆され、トランプ氏に対する捜査が活発化する可能性がある。トランプ氏が今度は報復される立場になる。
トランプ氏が多発した大統領令に米国も世界も仰天して振り回されているが、おそらく民主党候補が大統領になれば、その多くは撤回・修正されるだろう。だがトランプ氏は気にしない。憲法を改正して続投することができないと分かっているから、高齢のトランプ氏は2期目の4年間にやりたいことを全部やるしかないと決意し、議会にも頼ることができないからと大統領令や外交などで独自の施策を乱発している。
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