2025年3月8日土曜日

神風と米軍

  トランプ大統領の米国は、従来の理念や同盟関係に縛られない新しい国際関係に移行することを始めた。米国の現実的な利害を最優先して各国との関係を判断し、再構築することにしたようだ。本音の外交とも正直な外交とも見えるが、米国が超大国からフツーの大国に転落したことの反映であろう(国内市場を各国に開放して稼がせたり、世界各地に米軍を展開させたりする余裕がなくなった)。

 米国と各国の経済関係の摩擦や緊張は珍しいことではなく、強引な解決策を米国は各国に強いてきたが、そこでは各国との交渉があった。トランプ政権の外交は実利優先のディール(取引)重視とされ、過大な要求をふっかけて圧力を加え、受け身になった相手国には譲歩に次ぐ譲歩を求め、狙った実利を米国が得るスタイルだ(米国の要求に従わない中国などには圧力を増大させる)。

 米国の自国優先への転換は、米軍の軍事力に頼る相互防衛体制の脆弱さを曝け出した。NATO諸国は米国を防衛していないとトランプ氏はNATOに対する支出を疑問視し、NATO加盟国に国防費の割合をGDPの5%に引き上げるよう要求した。EU内からは「トランプ政権はもはや同盟相手ではない」(オランド前フランス大統領)などの声が聞こえるようになった。

 自国防衛を米国に頼ることに不信を持った欧州各国は、当面は米国をNATOに引き留めることに励みつつ、中長期的に米国依存から脱却するべきだとの意見が強まったこともあり、米国に頼らない自国やEUの防衛戦略の再構築に動き始め、欧州独自の軍隊の創設も現実味を帯び始めた。NATO加盟国が侵略を受けたり、戦火が迫ったりした時に、米軍が動くかどうか確信できないなら、同盟の意味がない。

 トランプ政権の米国が中国を最大の競合国と見なす間は、在日米軍が収集する各種情報や在日米軍の軍事的抑止力などの価値は高く、日米安保条約は米国にとって重要だろう。だが、トランプ政権の米国がプーチン氏のロシアに宥和的になり、それがNATO軽視につながっているとすれば、いつか中国と関係改善した米国が、日米安保条約による日本防衛義務を負担と見なすようになるだろう。

 日米安保条約が形骸化し、日本が侵略を受けた時に米軍が頼りにならない可能性が無視できなくなれば、日本は自力主体の防衛政策に転換しなければならないだろう。その場合、軍事大国化を否定する姿勢を示すことが歴史的経緯からも必要になるので、基本方針は①専守防衛に徹する、②他国の領土・領海・領空で作戦行動を行わない、③核兵器を保有しない-だ。

 いつか神風が吹いて敵軍を壊滅させる-との期待の現代版が「きっと米軍が助けに来てくれる」か。神風も米軍も現実としてアテにならないと覚悟すれば、自力主体の防衛政策を構築する必要性が見えてくる。永遠の同盟はなく、国際関係の変化に応じて各国は手を組む相手を必要に応じて変えてきた歴史を振り返ると、20世紀に始まった同盟だけが永遠に続くはずがない。

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