2025年5月10日土曜日

バカだと言うこと

 「おまえはバカだ」と言われて、怒らない人は①気が弱い、②そうだと認めている、③争いを避けることを優先する、④意見の相違を包容する人格者-のどれかだろう。面と向かってバカと言われては、怒る人が多いだろうが、バカだと言われたという現実を理解することに戸惑って呆然とし、返す言葉を失う人もいるかもしれない。

 何か失敗をした後で、「バカなことをしてしまった」と思う人は珍しくないだろうが、だから自分はバカだと考える人はほとんどいない。自分はバカだと思っていないから、失敗をとがめられて「おまえはバカだ」などと言われると、多くの人は怒り、相手が上司などで言い返すことができない時には、怒りを腹の中に溜め込んだりする。

 バカという言葉は強い罵倒語であり、言われた人は感情的に反発するので、他人に向かって言うのは控えるべき言葉だが、失敗や間違いの責任を負う人に周囲が怒りにまかせて、つい口にしたり、あきれ果てて、つぶやいてしまったりする。言われた側が反発して、「おまえこそバカだ」などと罵倒語に罵倒語で返したりすると人間関係はこじれていくばかりとなる。

 罵倒語のバカは、知能の低さではなく、失敗や間違いを責めているのだが、バカと言われた人が感情的に反発するのは、バカという言葉で自分の人格が否定されたと感じるからだ。自分はバカではないと思っているから、バカと言われて怒る。自分の能力に何かの劣等感を持っている人は珍しくないだろうが、それも個性だなどと受容して折り合いをつけているに違いなく、自分はバカだとは思っていないだろう。

 愚かな判断をしたり、愚かな言動を繰り返す人も周囲からバカだと見られる。適切な判断や適切な言動をしなかったり、できなかったりする人が存在するのは事実であろうが、そんな人も「自分はバカだ」とは思っていないだろう。「自分はバカだ」と思い、ある種の引け目を抱いたまま生きている人もいるかもしれないが、そんな人も「おまえはバカだ」と言われることは歓迎しないだろう。

 他人を見下し、自分は優秀で利口だと過剰に自負している人なら「世の中はバカばかりだ」と考えるかもしれない。そういう人にとってのバカとは、自分を高みに置くための比較対象の人々のことであり、自分と同格の優秀で利口だと認める人々以外の全ての人をバカとして見下す。だが、他人を見下す人は適切な判断ができなくなっているので、バカの一種である。

 世の中には様々なバカがいるのだが、自分がバカだということを自覚しないバカに「おまえはバカだ」と言うと、怒るだろう。バカという評価は不当だと怒る。誰に対しても「バカだ」と言うのは不当なのだが、失敗や間違いなどを厳しく批判しなければならない状況はある。様々なバカにバカという言葉を使わないで批判するには、説得することを意識して話すしかないだろう。

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