ロシアは、▽ロシア系住民の保護▽NATOの東方拡大を防ぐ▽ウクライナの「非ナチ化」-などを主張してウクライナ侵攻を正当化する。23年10月のハマスによる奇襲に対する反撃として始まったイスラエルのガザ侵攻はガザを破壊つくした様相だが、現在も続いており、住民を追い出してガザをユダヤ人の入植地にすることを狙っているとも見られている。
この二つの侵攻に共通するのは、支配地の拡大を実現したことだ。ロシアはウクライナ東部を占領し、クリミア半島まで続く一帯を勢力圏に収めた。イスラエルはヨルダン川西岸でユダヤ人の入植地を拡大させていたが、ハマスを弱体化させてガザを管理下に置き、さらに防衛地帯を設けると主張してシリア南部を占領するなど勢力圏を拡大した。
米国のトランプ大統領は、グリーンランドの獲得に意欲を示し、パナマ運河の返還を要求し、カナダを吸収して51番目の州にすることを提案した。これらの主張の本気度は定かではなく、ディールの材料として「ふっかけた」可能性が高いが、素直に受け止めると、領土拡大の願望の現れと解釈できる(軍事力を行使せずにディールだけで領土拡大を実現することは困難だろうが)。
領土や勢力圏の拡大を目指す膨張政策は帝国主義とされ、実際に広大な領土・勢力圏を構築した帝国は数多い。1世紀のローマ帝国、4世紀の西ローマ帝国やビザンツ帝国、6世紀の隋、7世紀の唐、10世紀の神聖ローマ帝国、13世紀のモンゴル帝国、14世紀の大元、17世紀のオスマン帝国、18世紀のスペイン帝国や大清帝国、19世紀のロシア帝国、20世紀の大英帝国やオーストリア=ハンガリー帝国やドイツ帝国や大日本帝国やイタリア王国など、歴史を振り返ると世界各地に帝国が誕生して勢力を広げた。
領土拡大を実行する国が21世紀にも存在することを示したロシアとイスラエルだが、領土拡大の願望は埋火のように世界各地に潜んでいる。例えば、中国の国恥地図ではカザフスタンやアフガニスタンからモンゴルを含めサハリンまで、南はシンガポールやマレーシアまでを領土としている。インドには、英国の植民地であったインド帝国の復活を主張する大インド主義があるという。それはパキスタン・バングラデシュ・ミャンマー・ネパールなども領土とする。
周辺の領域(他国)に対して領有権を主張して次々と自国の領土とした歴史があるロシアは、力づくで周辺の領域(他国)に住む人々を従属させることを当然視する傾向があるという。バルト3国や中央アジア諸国など旧ソ連に属する諸国や東欧諸国がロシアに警戒感を持ち続けるのは、周辺への膨張衝動がロシアに根付いていることを知っているからだ。
国境線の書き換えを伴わない各国の勢力圏の拡大は常に行われているが、領土の拡大を実現した国境線の変更は、ロシアのクリミア半島の編入が第2次大戦後の初めての例だ。中国は南シナ海のほぼ全域に対して管轄権を主張し、実効支配を進めている。ロシアやイスラエルの行動が容認された世界は新たな帝国主義の時代となる。
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