2025年5月24日土曜日

生ものが苦手

 友人は「最近、味覚が変わった」と言う。好き嫌いは若い頃から少なく、家庭でも居酒屋でも会食の場でも、出されたものは何でも食べていたという友人だが、還暦を迎えたあたりから、刺身や生卵、半熟卵、生肉などを食べても美味しいと感じることが次第に少なくなり、年月とともに苦手意識を持つようになったという。

 刺身や生肉などには生臭さを感じることがあり、レストランで半熟卵のオムライスを食べた時には、かすかに生臭さが漂っていることを感じて、「半分以上、残した」と友人。苦手意識を持つようになると刺身や生肉を咀嚼しても、ぐにゃぐにゃ、ぐにゅぐにゅとした食感に違和感を感じ、食べていても美味しさなどはあまり感じなくなったという。

 刺身など生ものが苦手という人は珍しくはない。日本食レストランが世界各国に増え、日本食が目当ての訪日外国人も増え、刺身や寿司などを好む外国人が増えているというが、生ものを日常的に食べる食習慣がある国は少ないそうだ。そうした食習慣の中で育った外国人が生ものに拒否反応を示すのは自然なことだろう。

 その昔、日本人が魚を生で食べると知って「日本人は未開人だ」と言った欧州の人がいたそうだが、食文化は身体に染み込んだものであるだけに、異なる食文化を理解するのは簡単ではない。とはいえ、和食人気の世界的な広がりとともに刺身や寿司などを食べる体験をした人々が増え、生の魚の味わいを体験して好むようになるのは特異な行動ではない。未知の味は食べてみなければ、美味しいか不味いかは分からず、チャレンジするしかない。

 TVの旅番組や街歩き番組などで出演者が美味しそうに刺身などを食べている場面を見て友人は、味覚を「戻そう」と刺身や寿司などを量販店で買って試してみたそうだが、「魚種の味の違いはわかるが、たいして美味いとは感じなかった」と、途中から醤油を増やして食べたそうだ。「美味いと感じなかったら無駄だ」と海鮮居酒屋や寿司店に行って試してみる気にはならず、卵かけご飯やレアステーキなどにはそもそも食べる気が起きず、試していないと友人。

 生ものに苦手意識を持つようになった友人だが、食中毒や細菌・ウイルスなどの感染を警戒するからではないと言う。以前は食べていた生もので食中毒や感染症にかかったことはなく、日本で提供される生ものは安全だと今でも疑っていないそうだ。一方で、何でも生で食べることを囃す雰囲気には批判的で、鶏肉や牛豚などの内臓類を生で食べるのは危険だと知っている。

 生ものに苦手意識を持つようになった友人だが、外食を好み、食べ歩きは続けている。「日本流の洋食や中華のメニューには煮たり焼いたり揚げたりしたものが多く、美味しい料理がいろいろある。和食にも煮もの焼きもの揚げものに美味しいメニューがある」と友人。洋食や中華を含め日本食の幅広さや奥行きの深さを実感しているそうで、刺身や生肉など生ものは避けても「美味しい料理の多さに感嘆している」友人は、食べることの楽しさを失っていない。

0 件のコメント:

コメントを投稿