2025年8月2日土曜日

リスナーの声

 局から一方的に電波を発信するのはテレビ放送もラジオ放送も同じだが、視聴者や聴取者ら電波の受け手の声を積極的に番組づくりに取り入れてきたのはラジオ放送だ。電波を送る側と受け手の活発なやり取りや巧妙な掛け合いなどでラジオ番組は聴取者を楽しませる。

 テレビ番組は事前に収録することが多く、生放送のニュース番組では内容が事前に決められているだろうし、お昼のワイド番組では並んでいるコメンテーターに喋らせるので、視聴者の声を取り上げる必要もない。ラジオ番組は生放送が多く、おそらく低予算でスタッフの人数も限られる中で、番組を盛り上げていくには聴取者の反応を取り込んで、話題を展開させる。

 現在はツイッターなどがあるのでリスナーの声を番組に反映させることは容易になった。SNSがなかったころは聴取者は番組にハガキを送ったり、生放送中にスタジオから聴取者に電話をかけたりして、受け手の声を番組に取り入れていた。一方的に送られてくるラジオ番組だが、コミュニケーションの場になっていた。

 一方、ラジオ番組のパーソナリティが各地に出向いて、様々な人々に会って、その声をスタジオに持ち帰ることに努めていたというのが永六輔氏(宮本常一氏の助言だという)。聴取者の大半はハガキを出さず、ただ番組を聴いているだけだが、その人々にも番組で取り上げるべき主張や指摘があるはずだから、それをパーソナリティが汲み上げて、スタジオに持ち帰って番組に反映させるとする。

 そうした行動はおそらく永六輔氏のほかには誰も行っていない。電波の受け手の声を聞きに行くことよりも、ハガキや電話やSNSなどで寄せられる電波の受け手の声を適当に紹介しておくだけでラジオ番組が成り立つのだから。それに、永六輔氏のように全国各地を訪れることを年中行っている人もいないだろう。

 人々に身近でアクセスしやすい存在であっても、ラジオの聴取者で「ほぼ毎日」聴く人はAM放送で17.7%,、FM放送で14.3%だ(総務省調査)。調査では聴取者は男性は40代〜70代、女性が70代と比較的高く、ラジオ聴取者の半数を占める。インターネットラジオでは学生の比率が高く、聴取機器はカーオーディオ、スマートフォン、据え置き型ラジオの順で、自動車乗車中の聴取が多い。

 情報源としてテレビとインターネットが圧倒的に利用され、ラジオの存在感は小さく、新聞閲読時間とラジオ聴取時間はほぼ同じだ(総務省調査)。10代・20代のモバイル機器(スマホなど)によるインターネットの平均利用時間は長く、平日の10代・20代はともに250分を超過し、休日の10代・20代では300分を超過する。

 情報源として重視されなくなったラジオだが、SNSで誰もが情報発信できる時代になったとはいえ、放送で自分の投稿が読まれて電波に乗ることに誇りや満足感などを感じる人もいるだろう。そうした人々の投稿によってラジオ番組は支えられているが、投稿する人々が限られているとしたなら、特定の人々のコミュニケーションの場と化したラジオ番組は聴取者の幅を広げることが簡単ではない。開かれたコミュニケーションの場を維持することがラジオ番組にとっては需要だ。

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