水泳競技では選手はプール内の自分のレーンを往復するだけだ。陸上競技の短距離走では選手は決められたレーンを走り、中距離走では選手はトラックで周回を重ねる。展開が複雑な球技などと違って、単調とも言える運動(泳ぐ、走る)を選手が続けるだけの競技なのだが、どちらもオリンピックでは花形競技だ。
技の良し悪しなどを審判員が決める採点競技とは違って、観客が出場選手の優劣や勝敗をすぐ理解できるのが水泳や陸上競技だ。泳いだり走ったりする選手の誰かがリードを広げたり、複数の選手が抜きつ抜かれつする様子に観客は声援を送ったり、歓声を上げたりする。分かりやすさが花形競技であり続けることを支えている。
自転車競技も、展開や勝敗が観客に分かりやすい競技だ。プロが参加するツール・ド・フランスは五輪やW杯とともに世界3大スポーツイベントとされるそうで、欧州では自転車の長距離レースは人気があるという。日本でも長距離レースが行われているが、人気があるのは短距離のレースだ。それは競輪。
競輪は地方自治体が主催する公営ギャンブルなので、競輪場にはギャンブル常習者が集まっているなどと色眼鏡で見られたりし、競馬が「健全」な娯楽とみなされていることとは対照的だ。JRAの圧倒的な集客力と資金力(マスメディアに大量の広告を流す)の効果でイメージアップが行われた。競輪場にも家族連れがいて、賭けずに見るだけのファンもいるのだが、「健全」な娯楽との社会的な認知には至っていない。
自転車の短距離競技としての競輪の迫力は、スピードだ。先導員がいて周回する間は時速40キロ前後で走るが、先導員が退避して選手の自由な競争が始まると徐々にスピードが上がる(空気抵抗が大きい先頭を取りたくないと牽制しあって緩むこともある)。そしてゴール前の200mでは各選手が全力でペダルを踏み、時速60キロ以上にも達する。
バンク(競輪が開催されるオーバルコース。1周が333m・335m・400m・500mの4種類あるが、最も多いのが400m)を周回する選手はラインを組み、他のラインと競うので団体競技の趣きだが、ゴール前の200mでは個人戦となり、各選手は一つでも上位でゴールするべく競う(ラインを組んでいた選手が前にいて邪魔になると、どかして自分が前に出る選手を見ることも多い)。
「公営ギャンブル=悪」といった先入観から脱して、自由に見ることで競輪のスポーツ競技としての面白さが浮かび上がる。水泳や陸上競技と同じような、選手の優劣や勝敗が分かりやすく、スピードに加え、ラインの駆け引きや選手の位置取りなどで展開は複雑となり、見る楽しさに満ちている競技だ(1レースは3分ほどで終わる)。五輪にも出た選手たちの圧倒的なスピードの迫力は競輪場で実際に見なければ体感できないだろう。
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