「金持ち喧嘩せず」とのことわざがある。その解釈は「①金持ちは利にさとく、喧嘩をしても得することがなく、時には損をするので、他人と争うことはしない、②金持は利をもたらさない無駄な争いはしない、③金持ちは心に余裕があり、他人と争う気持ちになりにくい」とされる。
貧富の格差が拡大した各国で、資産が日本円で数千億円という大金持ちが増えているようだ。そうした大金持ちが「金持ち喧嘩せず」と穏やかに鷹揚に振る舞ってくれれば世間は、大金持ちを羨みつつ憧れたりし、中には、うっかり尊敬したりする人もいるかもしれない。だが、トランプ氏のように大金持ちになっても、攻撃的で喧嘩を好む人もいるので、全ての金持ちが「喧嘩せず」ではない。
大金を持つことで人の性格は変わるのだろうか。穏やかな性格の人が金持ちになれば「金持ち喧嘩せず」となる可能性が高いが、他人に対する許容度が低い人は金持ちになっても他人に対して厳しく接するかもしれない。金持ちになって生活の不安がなくなり、金で解決できることは金で解決すればいいさと鷹揚な境地になったなら「金持ち喧嘩せず」だろうが、金持ちになった人が全て鷹揚な境地に達するかどうかは不明だ。
艱難辛苦を乗り越えて一代で金持ちになった人なら、日々の暮らしに追われる人々を理解・共感しやすいだろうが、金持ちだった親の資産を受け継いだ人は、贅沢な暮らししか経験していないだろうから社会経験が限られ、日々の暮らしに追われる人々を見下げたり、努力が足りないなどと酷評するかもしれない。そういう人は自己責任論を自己の肯定のためにも他者批判のためにも活用する。
金持ちだから階層の上位にいると過信し、わがままに振る舞うことが当然と思い込み、自己の感覚・主張に反する他者を許容することができず、厳しく批判し、時には喧嘩する金持ちもいる。そんな金持ちが権力や権威を求め、権力や権威を得ることができると、その権力や権威を用いて「金持ち喧嘩する」が実現する。権力や権威を持った金持ちは時には絶対君主であるかのように振る舞う(国によっては権力を占有した人が私腹を肥やし、大金持ちになる)。
資本が権力に接近し、権力が資本に接近する構造は世界各国で古くからあるが、各国で増えた金持ちが権力に接近し、権力は金持ちに近づくようになった。格差社会が拡大しているのは、格差を問題としない金持ちの政治権力に対する影響力が増大し、格差を是正しようとする動きが制約されているからだ。金持ちが喧嘩するのはトランプ氏のように目に見える場合もあれば、権力に影響力を行使するだけという見えにくい場合もある。
新しく金持ちになった中国も、強気で各国との喧嘩を辞さない。膨大な人口を抱え、共産党による統治が迷走して貧しい国とかつては見られていたが、外資を積極的に呼び込んで経済成長を続け、世界2位の経済大国になり、国内に多くの金持ちを生み出した。喧嘩を売ったり買ったりする金持ち国に対して各国は戸惑い、対応に苦慮している様相だ。トランプ氏や米国、中国などへの対応に悩んでいる人々や国は、「金持ち喧嘩せず」なんて信じることはできない。
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