2025年10月8日水曜日

国境の内と外

 グローバリズムは「人、モノ(商品など)、マネー、情報が国境にとらわれず、自由に動くことができるようになった状況」を示す言葉だ。以前は、「国家を超えて、地球全体を一つの共同体とみる考え方。汎地球主義」がグローバリズムと理解されていたが、現在は、世界が単一の市場になったとの経済的現象として理解されることが多くなった。

 世界が単一市場になったとのグローバリズムにより、人やモノの国境を越えた移動が活発になり、国境の役割が減少するとともに国家の存在感も希薄化しつつある気配だった。民主主義や自由や人権など欧米由来の価値観は各国で共有すべき規範だとの主張があり、経済も政治も社会もいずれ世界は共通の制度・価値観になると早合点しそうになるが、国家の存在は簡単には揺るがない。

 グローバリズムの恩恵を最も受けたのが中国だ。欧米などから資本と技術を供与されて世界最大の製造拠点となった中国は、欧米など各国への輸出で急成長した。だが中国は、モノの輸出ではグローバリズムを支持・活用するが、人・マネー・情報の国境を超えた移動は厳しく監視・制約する。国境で国を「閉じる」が、世界に対しては自由貿易を主張し、中国の国境外におけるグローバリズムを肯定する。

 現在のグローバリズムの推進者は米国だった。経営陣は米国内で生産するよりも中国で生産して輸入したほうが安上がりだと国内の工場を閉鎖し、大量の従業員を解雇した。グローバリズムのおかげで消費者は旺盛な消費を続けることができたが、解雇された人々の不満は鬱積し、現在のトランプ政権の誕生につながったのだから、トランプ政権は反グローバリズムに動かざるを得ない。

 トランプ政権は高関税により国を「閉じる」方向へ向かうが、モノの輸入を減らすと人々の消費の制約となり、社会が持たない(高関税は国家収入を増やすための策で輸入は大幅減にはならないだろう)。各国からの巨額の投資を歓迎し、米国内に製造拠点を建設させることで、やがて輸入に頼らずとも国内需要を満たすことができる体制にすることを狙う。だが、それにはかなりの時間を要する。

 トランプ政権はモノの輸入を制限し、留学生や高度人材の入国制限など人の移動も制限し始めた。だが、マネーの流入は歓迎し、情報の流通を制限しようとするEUなど国外での動きを牽制する。米国は国内では反グローバリズムの政策を進めるが、米国以外の世界においてグローバリズムを維持・推進する。自国の利益を最優先に国内は「閉じる」が、国外においてグローバリズムを維持しようとする米国は、中国と似てきた。

 反グローバリズムは国家主権を回復させる動きとも考えられ、EU各国などでの極右勢力の伸長も、グローバリズムに同調した既成権力批判とも解釈できる。国際的批判を浴びても軍事行動を続けるロシアやイスラエルは自国の国家主権を国際秩序の上位に位置付ける。グローバリズムの潮流にただ従うのではなく、グローバリズムをいかに利用するかが国家の課題となった。

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