2025年10月25日土曜日

貴重な経験

 「いやあ、ひどい目に遭ったよ」と友人。どうしたのか聞くと、「平日に休みが取れて、妻や子供は予定があるというから、一人で海辺をドライブ旅して、見かけた店で昼には海鮮丼を食い、夕方は居酒屋に入って井之頭五郎を気取って、酒抜きで、あれこれ頼んで食ったんだ。ところが1時間もしたら、急に腹の調子がおかしくなって、トイレに2回行ったが、どうもおかしい」。

 続けて「店を出て車に戻ったが、今度は吐き気がしてきた。近くの公園に公衆トイレがあったことを思い出して、車を走らせ、トイレに駆け込んだんだが、そのあとは嘔吐して、しばらくして下痢をしてと、嘔吐と下痢を何回も繰り返して1時間以上もトイレにこもりっきりになった。足に力が入らず、ドアノブにかけた手の力で、やっと立ち上がることができる状態だった」とし、初めてのひどい体験だったと友人。

 医者に行ったのかと聞くと、友人は「嘔吐と下痢を繰り返して、出すものがなくなってからは落ち着いたし、帰宅した頃には異常は感じなくなったから、医者には行かなかった」と言い、「何かの食中毒だろうと思うが、旅先のことだったし、症状がなくなってから行っても医者には判断がつかないだろう。食べたものも吐瀉物や便も持ち帰ってはいないのだから、検査しようがない」。

 食中毒だったとしても、友人の奥さんや子供には何の症状もなかったというので、その日に友人が食べたものに菌やウイルスが潜んでいたのか、数日前に食べたものに菌やウイルスが潜んでいたのかは不明だ。ちなみに潜伏期間は、セレウス菌は30分〜16時間、黄色ブドウ球菌は1〜3時間、サルモネラ属菌は6〜72時間、腸炎ビブリオは8〜24時間、ボツリヌス菌は8〜36時間、ノロウイルスは1〜3日、カンピロバクター属菌は1〜7日、O-157(腸管出血性大腸菌)は数日とされる(秋本病院HP、以下同)。

 いずれの中毒でも嘔吐と下痢を伴う(ボツリヌス菌の中毒では便秘を伴うという)。友人の場合、腹痛は軽微だったというので、主な症状が嘔吐と下痢になるセレウス菌の中毒が考えられるが、セレウス菌は毒素の違いにより嘔吐型と下痢型に分けられるそうだから、嘔吐と下痢を繰り返した友人には当てはまらないか。

 細菌性の食中毒は食中毒の多くを占め、飲食により摂取した細菌が腸管内で増殖することで発症する感染型の原因菌はサルモネラ、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌などで、細菌が腸管内で増殖して産生された毒素が原因物質となる毒素型はO-157、セレウス菌(下痢型)などや黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌(嘔吐型)などとなる。また、食品の飲食などでウイルスが口に入ることで引き起こされるウイルス性食中毒では大部分がノロウイルスが原因。

 何か思い当たる食品や食事はないのかと聞くと、友人は「匂いや色が変なものは普段から食べないし、あの日に食べたものにも気になったものはなかった。まあ症状が長引く食中毒ではなかったから、貴重な体験だった」と笑った。下痢や嘔吐を繰り返すことで菌などが体外に排出されたのだろうが、下痢止め薬を服用すると細菌やウイルスが排出されず症状が長期化する可能性があるという。

 ※農水省によると、直近5年間の食中毒発生件数は700~1100件で推移し、2024年の食中毒は1037件(患者数1万4229人)。5年間の食中毒の原因別では、カンピロバクターなど細菌が30.1%、ノロウイルスなどウイルスが14.6%、アニサキスなど寄生虫が46.1%、キノコなど自然毒が6.3%、ヒスタミンなど化学物質が1.0%となる。

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