2025年10月17日金曜日

国民の生命

 野良猫に迷惑しているからと勝手に駆除することは動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)に抵触する。野良犬の個人による駆除も同様だ。カラスやハトを個人で勝手に駆除することは鳥獣保護管理法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)で禁止され、キツネやタヌキやアライグマなどの野生動物を勝手に捕獲することも同法で禁止されている。

 ヒグマやツキノワグマを個人が勝手に捕獲したり、狩猟することも鳥獣保護管理法で禁止されている。猛獣であるヒグマやツキノワグマを個人で勝手に捕獲・狩猟するには相応の道具や武器が必要だろうから、個人でヒグマやツキノワグマに立ち向かうのは簡単ではない。米国などのように個人の銃所持が日本で許されていたとしても、素早く動く攻撃的なクマに、ハンターでもない個人が立ち向かうのは無謀だ。

 つまり集落や市街地に出没するようになったヒグマやツキノワグマに個人で対応して捕獲や駆除をすることはできず、行政頼みとなる。鳥獣保護管理法で認められる鳥獣の殺傷は「狩猟による捕獲」または「許可による捕獲」のみで、クマが現れて被害が出たか被害の恐れがあるときに許可を申請し、捕獲や駆除が許可される。野生のクマは原則的に保護すべきという法律なので、捕獲や殺傷は制約される。

 クマの個体数を適切に管理する体制が構築されていたなら、増えすぎたクマが集落や市街地に出没することを防ぐことができただろう。山におけるドンドリなどが不作なのでクマが人里にまで現れるというニュースが増え、クマが増えすぎているとの論が後退した気配だが、そもそもクマの実際の生息数がぼやけているのだからクマ出没増加の理由は推定でしかない。どんぐりの不作とクマの個体数増加が同時に生じた可能性もある。

 「国民の生命と財産を守る」ことを掲げる政党は多い。日本各地で集落や市街地に出没したヒグマやツキノワグマによる日本国民の殺傷事件が毎日のように報じられるが、政党や政治家から緊迫感を伴うメッセージは出てこない。「国民の生命を守る」ことをどこまで本気で考えているのか疑わしく、政党や政治家が掲げる単なるキャッチフレーズの一つなのかもしれない。

 永田町では権力争いが過熱し、政党や政治家が永田町の外には目を向けていない現在、緊急性のある有効な対策は皆無のまま、クマによる殺傷事件は今後も続く可能性がある。起きてほしくはないが、もし子供がクマの被害にあったなら世論は沸騰し、「なぜ悲劇を防ぐことができなかったのか」と行政に対する批判が一気に高まるだろう。政党や政治家は地方自治体を責めて、それから政党や政治家が何らかの主張を始めるとの対応が見られるかもしれない。

 国民は自力ではヒグマやツキノワグマに対応できず、地方自治体には独自でヒグマやツキノワグマを捕獲したり駆除する能力はなく、クマが集落や市街地に出没して危険性が可視化されてから猟友会頼みとなる。政党や政治家が国民一人ひとりの生命を守ることを真剣に考えていない現状と、クマの集落や市街地への出没が続く可能性が高いことを考え合わせると、クマによる日本国民の殺傷事件は続く。

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