2025年10月29日水曜日

中国の過剰生産

 資本主義経済で急激かつ深刻な不況が続く経済状態が恐慌だ。企業の倒産・工場閉鎖・操業短縮などが相次いで起きて産業活動が停滞・マヒし、経営者や投資家らの破産、失業者や滞貨の大幅な増大、株価などの暴落、預金者による銀行の取り付け、銀行の閉鎖などで社会的な大混乱が起こる。 

 代表例は、1929年に米国から始まり、全世界に波及した大恐慌だ。ドイツ経済が破綻し、イギリス・フランスの経済も破綻、保護主義が広がり、やがてファシズムの台頭などもあって第二次世界大戦へと至った。2008年の米リーマン・ブラザーズの破綻から始まって世界を同時不況に巻き込んだ金融危機と景気後退は恐慌になるかと不安視されたが、数年後には世界経済は緩やかな回復基調に転じた。

 恐慌になる道筋は--自由競争の結果、企業群の生産が過剰となり、供給が需要をはるかに上回るので在庫が増えるが売れず、操業短縮や工場閉鎖などで失業者が大幅に増えて需要がますます衰え、景気低迷が続くとともに企業の倒産や銀行など金融機関の経営危機が相次いで、深刻な不況が続く。過剰生産は資本主義につきもので、不況は珍しくなく、好不況の景気循環は常にある。

 恐慌が滅多に起こらなくなったのは、国際貿易が活発化し、市場が世界に広がったからだ。例えば、ある国でテレビが生産過剰になって売れなくなったとしても、テレビの需要に対して供給が足りていない他の国に輸出すれば、生産過剰となっていたテレビの新たな市場が確保できる。市場が1国内に限られているより、世界市場を相手にするほうが需給バランスは調整しやすい。

 現在、世界市場があるからと国内における過剰生産を放置しているのが中国だ。共産党は5カ年計画などを制定し、計画経済を維持している格好だが、実際には国営企業や民間企業などの生産は自由に拡大させ、鉄鋼をはじめとして多くの品目で過剰生産となり、国内では様々な分野で過当競争が続き、値下げが繰り返される。最近は太陽光パネル、EVなど自動車、リチウムイオン電池などが中国から世界市場にあふれ出ている。

 中国から世界にあふれ出た生産物は、安さを武器に各国市場を席巻する。中国の過剰な供給力が世界各国の市場の需要を満たすだけなら需給のバランスは保たれようが、競合製品を中国製品が駆逐することも起きる。リチウムイオン電池のように自国で生産できない国なら中国製品は歓迎されようが、EVなど自動車では中国製が売れると自国企業のシェアは縮小する。

 独裁する共産党が経済を管理する中国で過剰生産が続くのは、生産(供給)を最優先する官僚支配が行われているからだ。過剰な投資と過剰生産は経済成長の要因だったので、過剰な投資と生産を適切に管理することができず、中国の過剰生産は今後も続き、世界に中国製品はあふれ出る。中国の過剰生産が世界で恐慌を招く懸念は小さいが、レアアースの輸出規制に見られるように、中国は過剰な供給力で各国市場を占有すると、中国からの供給を政治的な道具とする。グローバル化の恩恵を受けた中国の過剰生産だが、あふれ出る中国製品の激増は世界の問題となった。

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